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えいざつき ~映画と世情と日常と~

主に映画の思い出について書きますが。基本は自分の思った事をつまり妄言を書きます。

<ネタバレ>『アメリカン・スナイパー』を料理紹介番組風に論評してみた。


アメリカン・スナイパー : 作品情報 - 映画.com

イーストウッド作品は庶民を相手した料理店である。師匠(映画監督)のドン・シーゲルから暖簾分けをしてもらっていらい庶民のために料理(映画)をつくってきた。分けへだてはしないが、その味は子供向け(トランスフォーマー)やファミリー向け(ベイマックス)ではなく大人向けである。それなりの年月を重ねてきたから通を唸らせるものも出してきたし常連も数多い。



だから、たまにいちげんさんやそうゆう味がわからない客がフラリと入り料理を口にして思わず「イマイチ」とか「まずい」とか言ってしまうと通や常連から冷笑の視線をあびることになる。「ガキが」という冷笑である。イーストウッドのあまり出来よろしくない『ガントレット』『ダーティファイター 燃えよ鉄拳』『ルーキー』をも食している彼らからすれば今の腕前は最高潮といっても良いくらいだからだ。「帰れ」の冷笑もあびるだろう。

通や常連を満足させているのが今のイーストウッドなのである。


イーストウッドは食材にもこだわりがあり仕込にも余念がない。好む食材は主に“マッチョ” イーストウッドはマッチョのいらだちや苦悩を引き出すのを自分の腕としている。もちろん彼にもヤワな奴がいることも承知しており『アメリカン・スナイパー』でも主人公の弟に「二度と来るか」と言わせているが、ヤワな奴はそこまでだ。まるで「そうゆう奴がいることはわかってはいるが、俺にはそうゆうのを描くことはできない」語っているかのようだ。

仕込みは念入りにやる。主人公の父親に「強い男は弱いやつを守らなければならない」と言わせて後に最初の任務に子供を殺させることをみせて、最初のひっかかりを作り、なにを言いたいのかを感じさせられるようにする。軍隊の訓練をテキパキとみせてクライマックスへとみちびく仲間の連帯感と「訓練よりもつらい現実が待っている」と後でわかるように全体の下味をここでつくる。女房に「男運が悪い」といわせてラストへの予感をさりげなく予想させて、ラスト前の傷痍軍人達を意識して明るく描くことによって最後の男の不気味さと居心地のわるさを引き立たせる。

通や常連はイーストウッドのそんな目の利き方を楽しむ。


イーストウッドは極端な味付けや盛り付けはしない。理想の食材と念入りの仕込みがうまくそろっていたら最高の仕事をするし、その自信もある。同業者(映画監督)のスティーヴン・スピルバーグ、リドニー・スコット、オリバー・ストーンが極端な味付け(戦闘シーン)や盛り付け(音楽)をついしてしまうのに対してイーストウッドはそれをしない「素材と仕込みのみで楽しんでくれ」といわんばかりの作り方を徹底的にする。クライマックスでのスナイパー同士の戦いが盛り上がりはじめたら砂嵐ですべてをかくしてファンタジーとしてのアクションではなく、命がけの撤退を描き、食する(観ている)人々に刺激ではなく味そのものをしっかりとわからせる。

通や常連はそんなイーストウッドの腕に唸る。


イーストウッドの味を楽しんでいる通や常連の不安は「彼がいなくなったらこのような味はもう楽しめなくなるかもしれない」という不安である。イーストウッドには子供は多くいるが、それを受け継いでくれる人がいない。それは「彼がいなくなったらアメリカではもう作り手がいなくなる」ことをしめしている。

そのことをひしひしと感じながら、通や常連は彼の料理(映画)を楽しんでいる。

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