えいざつき ~元映画ブログだったポエマーの戯言~

批評というよりも、それで思い出した事を書きます。そして妄想が暴走してポエムになります。

『ミッション:インポシッブル』シリーズを観直してみた。後編

注:ここではシリーズの表記を慣例にしたがって記します。[敬称略]

ミッション:インポッシブル』シリーズの続きを書きます。

eiga.com


 『ミッション:インポッシブル』シリーズがトム・クルーズの “俺様” 映画から微妙に路線の変更をし始めたのは『ロッキー2』 (1979) から始ったの80年代アクション映画が2000年頃になると頭打ちをはじめたからと自分は考えている。


アクション映画 - Wikipedia 

簡単にいえば「もう、飽きた!」だから、この時代を象徴するスターであるシルベスター・スタローンは従来の “俺様” 映画の間に『クリフ・ハンガー』 (1993) 『コップランド』 (1997) 『追撃者』 (2000) 等のドラマ寄りのアクション映画を交ぜてロッキーやランボーとは別のイメージをつくろうと苦心している。だから『M:I Ⅲ』もその流れにそったとも考えられる。何より『M:I Ⅱ』が “最後の” 80年代アクション映画だったと今にしては思えるほどに。

そして、ここであの人気テレビシリーズのプロダクションが製作に加わることで、シリーズはミステリーの要素が濃くなってゆく。


ミッション:インポッシブル3』 (2006) 



A:監督はJ・J・エイブラムズ。TVシリーズの『エイリアス』 (2001-2006) 『LOST』 (2004-2010) の総監督で。『M:I Ⅲ』が初監督である。印象としてはTV出身らしくアップとフルショットが多いがためにテレビだと問題はないのだけれど映画のスクリーンでそれをすると流れがギクシャクしている。
B:簡単にいえば主人公の人間としてのスパイ。またの名を『イーサン・ハントの結婚生活』この映画では前作の “俺様” 振りが消えて “人間” イーサン・ハントのスパイとしての葛藤がメインとなっている。だからアクションもサスペンスもその葛藤のために存在して劇中で出る重要な「ラビッドフッド」も何であるのかは最後までわからない。思うにこの映画はヒッチコック監督の映画のノリを現代(当時)風にアレンジしたのかもしれないが、それにしてはユーモアがないので、単純にアクションを愉しみたい人にはとまどうばかりだろう。『M:I』のデ・パルマ監督なら何とかしたのかもしれないが(事実『M:I』ではそうなっていた)映画では新人であるエイブラムズでは難しいかったという事か。
C:ここでベンジー登場。序盤にルーサーの顔見知りとして紹介されてクライマックスでイーサンをフォローしている。 ルーサーも危機的状態のイーサンを助けるために違反を覚悟でサポートする。(ここはグッとくる)侵入シーンは「ラビットフッド」のある高層ビルに隣の高層ビルからダイブして目的地に到着。正しその後の描写はなし。小道具は変装ラバーのみ。変装キットが今でいう3Dプリンターぽぃのが印象的


ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロコトル』 (2011)

 

A:監督はブラッド・バード。アニメの『Mr.インクレディブル』 (2004) を実写のしかもアクションの監督として起用。その期待に応えたのは誰でも知っているだろう。何しろ「シリーズ最高傑作」と呼ばれていたのだから。少なくとも『ローグ・ネーション』が公開さるまでは。奥行きを重視したサスペンスとアクションの演出は観ている者にかなりの満足をあたえた。しかし、陰謀の目的が「人類の新たなる進化」のため。なんて今にして思えばこの監督らしい。
B: ドラマの見どころだが、実は主人公はイーサンではない。途中から加わるブラントである。ブラントの過去の話がドラマの中心でイーサンは危険なミッションを自らの信念を元に坦々とこなしているだけなのだ。つまり、『M:I Ⅱ』でのアクションのイーサンと『M:I Ⅲ』のドラマとしてのイーサンを “分けた” 構成なのだ。だから、ブラントのあるわだかまりがミステリーとしての隠し味になっていて、派手なアクションをするイーサンの対比になり、これもドラマとしては奥行きにあるものとなっている。
C:前作にひきつづきベンジーが登場。謎の人物としてブラントはミッションをとおして仲間になる。ルーサーは最後に少しだけ。侵入シーンはドバイの高層にあるサーバー階にハッキングのために階下から上へそして消化ホースで一気に下へ。小道具は眼鏡を改良したコンタクトレンズ型カメラ、偽空間装置、壁のぼり用密着型グローブ、アタッシュケース型コピー機、等々などシリーズでは一番に多いが、意外にも変装ラバーは無い。


ここまで書いたから最新作『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネーション』も簡単に書いておこう。

 

A:監督は『アウトロー』 (2012) のクリストファー・マッカリー。サスペンスアクションの秀作を多く書いている脚本家でもある。
B:ドラマの見どころと主人公はもちろんイーサンではなく、イルサである。
C:ベンジー。ブラント。ルーサーが登場。侵入シーンはモロッコ発電所地下にある敵の情報を潜って奪取する。小道具は変装ラバーのみ。


キーワードは「ダチ」ベンジーもブラントもルーサーも、ここでは完全にイーサンを信頼している。それが誰も信用しない敵のボスであるレーンと一人危険な立場に追い込まれるイルサとの対比となってクライマックスの “爽快感” につながっている。 イーサンが完全にかつての『スパイ大作戦』のフェルプスの立場になっているのだ。そして「疑心暗鬼のなかを互いを信頼しあう仲間」がかつての雰囲気を感じさせている。

そしてこれが “先祖返り” の結論になる。 


ちなみに日本だとこのシリーズに共通するのは……

字幕が戸田奈津子なんだよね。


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