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えいざつき ~映画と世情と日常と~

主に映画の思い出について書きますが。基本は自分の思った事をつまり妄言を書きます。

『火星の人』と『月をマーケティングする』と『オデッセイ』の書評のようなもの

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略] 




はじめに

『オデッセイ』原作の『火星の人』を読んだときの印象が「文体こそ今風だが、これはニューウェーブ以前のSFだ」と、または「クラークぽぃ」の二つだった。ここでいうクラークとはもちろんSF作家アーサー・C・クラークの事だが『2001年宇宙の旅』『幼年期の終わり』の未来哲学を語るクラークではなくて『火星の砂』『宇宙島へ行く少年』のサイエンスライターとしてのクラークの方。

ニューウェーブSF(にゅーうぇーぶえすえふ)とは - コトバンク

だから『火星の人』と『オデッセイ』は自分にとってはサバイバルSFではなく古典回帰SFの印象になっている。ただ『オデッセイ』はバックに流れる80年代ソングが実は主人公の不安を描写しているらしくて、目の前に描写されている陽気さと対をなす陰影をかもしだしている違いはある。しかし「知性とユーモアは表裏一体」「知識で問題を解決する」を前面に押し出していることにはかわりはない。特に後者は『トゥモローランド』のテーマとまったく同じだ。

トゥモローランド : 作品情報 - 映画.com 

ただ『トゥモローランド』がそれを声高々に主張しただけのに対して『オデッセイ』はそれを実践してみせたところにある。それが「上から目線」よりも「親しみ」をもって観ている者に受け入れられたのだろう。それよりもこの映画の米日大ヒットが同時多発テロ以降、人々に眠っていた「ディズニー的な陽気」さを甦らせたのは大きい。

ちなみに『オデッセイ』は『ゼロ・グラビティ』と比べられる評もあるがそれには違和感をもっている。

ゼロ・グラビティ (映画) - Wikipedia

なぜなら『オデッセイ』がラストシーンに描写されているように「人間は困難を伴おうとも宇宙に進出する」を主張しているのに対して『ゼロ・グラビティ』は「人は大地に立ってのみ生きる意味がある」を主張をラストでしているからだ。



〇 火星をマーケティング

さて本題『オデッセイ』で主人公が言っていたアレス3そしてアレス4のアレスはもちろんギリシャ語のアーレスを指しているのだろうが、宇宙好きには幻となった月探査計画のコンステーション計画でのアレスを思い出すかもしれない。

コンステレーション計画 - Wikipedia

無くなった有人月探査が有人火星探査に変更になった名残が『オデッセイ』と原作の『火星の人』に滲み出ていると感じるのはただの勘ぐりすぎでもないと思う。そして『オデッセイ』は物見遊山な『レッド・プラネット』『ミッション・トゥ・マーズ』と違っていわゆる「火星探査」を本格的に主題にした映画だ。

これはNASAが本気で有人火星探査を実現するために着実に「布石」を打とうとしている表れなのかもしれない。よく言えば「賛同を得る」悪く言えば「世論を誘導する」だ。こんな感じになったのはディヴィッド・ミーアマン・スコット&リチャード・ジュレック著『月をマーケティングする』 (日経BP社) を読んでいたからかも知れない。

この本での内容で描かれるマーケティングは文字どおりアメリカの納税者に「有人月探査を魅力的な市場」と思わせるNASA広報の悪戦苦闘話なのだが、魅力的にみせるために国民の「熱狂」をどうやって火をつけて、ついたらそれをどうやってコントロールしていったのかがつぶさに描かれている。

この「熱狂」を維持させるのに疑問を感じる人もいる(またはいた)のかもしれないが「月」の代わりに「甲子園」と表記しても通用することなどから「熱狂」にそれほどの意味はない。なぜなら「ロマン」に意味などないからだ。酔いしれるから「ロマン」なのである。もちろんもっともらしい理由はつけるが 、例えば人類の進歩とか…… それはあくまでも付随であって本質でもない。歴史の知識が多少でもある人ならわかるだろうが人は結構その場その場の判断で行動しているものだからだ。実はそれほど長期的な考えでは行動していない。その場の積み重ねが進歩であり、そして歴史であるのだ。

有人月探査は冷戦の構造も背景にあるために当時のライバルである「ソ連に勝つ」という「国家的」な目標もあったがために勝利の実感を得たらしだいにその魅力を失って衰退していった。もしも有人火星探査を本気でやるのなら今度はどうやって「熱狂」をつくりだすのか?それがドンピシャに当たれば有人火星探査も「夢物語」ではなくなるのかもしれない。


なぜなら『オデッセイ』のヒットはそれが潜在として多くの人が「待っている」と証明したからだ。



 


 

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