ここでは題名名称を恣意的に表記します。[敬称略]
ちょこっとだけ『スーサイド・スクワッド』について書きます。
『君の名は。』を見知らぬ中年男性と並んでみた -- おそらくその時の観客のほとんどが男女 -- 自分から言わせてもらえば「若者ではなくお爺さんこそが『スーサイド・スクワッド』を観るべきだ」を主張してみたいと思う。もちろんアメコミの映画化だし、お客様層も同傾向のMCUの『デッドプール』の路線を狙っていて、どこをどうみても若者向けなのでお爺さん層には一見不向きに見えるだろうが、この映画の本質はいまは忘れ去られた「世の裏街道を生きる人々を」描いているからだ。
つまり……
長谷川伸の世界だから!
つまり股旅戯曲と同じ世界だから。
ここでいう股旅戯曲と同じとは 悪党で世の真っ当な人生を送れなかった者が、ふとしたきっかけで庶民と関わることで、自身の感情の収めどころと、死へと向かう、本来なら嫌われる存在である悪党の心に潜む情念を切々と描き、観客をじんわりと泣かせるドラマだから。
今作はそれと同じだと自分はみているからだ。
大事なところは表側と裏側を偏らずに対称的に描くこと。今作でも「タ〇〇フ〇〇〇Xのあの人がすべての元凶じゃないか!」とツッコミたくなる展開が後半おこる、お前は『仁義なき戦い』の山守か!
そのために展開が「悪党が悪知恵を使って世界を救う」話ではなく。「悪党がわずかに残っている “あちら側” の心で一人の男(フラッグ)と女(ジェーン)を救うために戦う」 なっているから、つまり股旅戯曲のカタルシスを知らないと、その感情の拠り所を間違えて「なんじゃいこれは!」でポカーンとなってしまうことは当然といえば当然。
この作品は「悪党が自分の生きる居場所を見つける」ドラマだからだ。だから意外と小さい話でもある。まさに長谷川伸!
だからドラマの展開と画面で繰り広げられるスペクタクルがうまくリンクしていなくてそのためかスケール感がイマイチ感じられなかったりもする。
しまいには昨今のクリフハンガーを意識した最後のシーンで逆にお爺さんが怒り出すかもしれない所もあって全体の評価としては微妙とはいえる。
しかし、それさえ踏まえていればそれなりに楽しめるのもまた確か。
これが『スーサイド・スクワッド』が「お爺さん向き」の映画であると自分が主張する理由である。