えいざつき ~映画と世情と日常と~

何かの感想というよりも、それで思い出した事を書きます。映画、SFが多めです。そして、たまに妄想が暴走します。

『美しい星』はどこまで『美しい星』になったのか?

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]

 


美しい星 - 映画予告編 

 

個人的な話から入るが、亡くなった友人からかつて三島由紀夫の『豊饒の海』の話を聞いたことがある。友人によると『豊饒の海』は「物語(ストーリー)の歴史(ヒストリー)を描きつつ、その解体を目指した」。要約するとそうなのだが、読んでいない人には何のことやら?だろう。実際に自分も後で読んだことはあるがそうだったし、現在ではその内容もほとんど覚えていない。

 

しかしその時、そうならば三島由紀夫は新たな「歴史(ヒストリー)としての物語(ストーリー)」を構築しようと考えたのではないのか?それが『美しい星』ではないのか?そんなことを『美しい星』を観て思い出した。純文学よりSF小説を好んで読んでいる自分としては嗜みとして『美しい星』は読んでいたから。

 

『美しい星』は結構に変な小説だ。物語と登場人物の葛藤を自分なりの文体で展開する通俗とは違って純文学はその作家の情念を他が真似のできない文体で展開する違いは理解していても、やっぱり変だ。シュールと言い換えても良いかもしれない。

 

そして映画では小説と違い大きな変更点が二つある。ひとつは核戦争の恐怖を環境問題に変えたこと、そしてアレだ……そこで映画は原作から何を抜き取ったのか?

 

ここでは自分の思い出を基にして、その部分と映画の感想を書いてみたいと思います。

 

 

ここから先はネタバレになります。映画を観ていない方にはおススメできません。

 

こうして読み手ないし聞き手による物語の読解可能性(広義の理解可能性)という本質的な問題が提起される。すなわち、あらゆる物語戦略の根底にある契約の問題である。(中略)言い換えれば、やり取りの根底にある、やり取りの根底にある語りの契約は、共有されている(と仮定された)知識に支えられている。

         ジャン=ミシェル・アダン著 物語論 より

 

自分たちはどうして物語を楽しむことができるのか? それは現在、過去に体験した感動を意識せずに照らし合わせてみているからだ。だから、突き詰めれば感動とは「過去のからの引用の妙」で成り立っているともいえる。そして個人的な体験を考えに入れてもその原典はやはり伝承や神話や宗教だろう。

 

だったらその引用の原典を更新することはできるのか?それをやろうとしたのがUFOと呼ばれる前の空飛ぶ円盤で設定した『美しい星』だった。『美しい星』は過去の引用に頼らずに新たな感動、つまり物語りの歴史を生み出そうとした作品だった。少なくとも三島はSFにそうゆう文学的な「希望」を抱いていたのは理解できる。

 

物語を解体した男は新たな物語を紡ぐために空飛ぶ円盤を使った。

 

映画では心がバラバラになった家族が宇宙人に目覚めることで絆を取り戻す展開になっている。「新たな物語が家族の歴史をつくった」ともいえる。

 

そして映画ではある物語が終焉するエピソードも入れてある。「美しい水」の部分だ。そこから物語とはもしかしたら薄っぺらいのではないのかと提示している。そして人はその薄っぺらさに繋がっている。という『桐島、部活やめるってよ』にも通じるモチーフでもあるソレは、物語に上下をつけずに相対化したともいえる。

 

だから、クライマックス(映画)での主人公の重一郎と黒木の舌戦は物語の対決でもある。どちらの物語が美しいか?という対決だ。原作でもそうだ。その美しい物語に人は含まれるのか?映画(環境問題)と原作(核戦争の恐怖)も主張はそこに集約されている。

 

その美しい物語の部分を抜くと良くある「地球にとって人類はガンのような存在」的な主張で連想できることからも分かる。

 

原作でも映画でもそこには結論は示していない。おそらくそれは「物語の歴史の一部」だからだろう。代わりに空飛ぶ円盤が重一郎たちに現れる描写をすることで、彼らが病的な人ではなく宗教、神話的な人々であるのを暗示して終わる。

 

こうして映画と原作は展開は違えど、その一点のみで繋がったと自分は思う。

 

 

補足:おそらく自分が『美しい星』に対してそんな思い込みをしているのはSF作家小松左京の影響からかもしれない。自著『SF魂』での締めの言葉だし、作風からも宗教からのアプローチには否定的なところがある。何より映画『さよならジュピター』で「人類の知恵と技術に祈りたい」という台詞で明確に主張しているから。

 

 

 

映画『美しい星』オリジナル・サウンドトラック

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生きるよすがとしての神話 (角川ソフィア文庫)

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