ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
アニメ映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』予告編
いきなり余談だが、公開時期が同じだからだろうが、ヒットしている『君の膵臓をたべたい』のクライマックスで起こる感動的な仕掛けをみて、この人も岩井俊二監督の『Love Letter』が好きなんだな。そして彼の作品が現在でもロマンス(感動)モノに影響を与えているのだともちょっとだけ感じた。どんな題材でも観ている者に不思議な感覚を感じさせるのが岩井監督の真骨頂というべきモノなのだからロマンスと相性が良いのも分かる。
アニメ映画『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』は自分はあまり評価していないのだが、それは後述するとして、『君の名は。』のような感動を求めた人にも不評なのも分かるが、オリジナルが好きな人から見るとアニメには、その魅力を表向きはすべてつぶしにきているのでツライ映画だとも感じるのも分かる。
それではオリジナルの魅力はどこにあったのか?それはもちろんノスタルジックな雰囲気とそこでヒロインであるなずなを演じる奥菜恵の美しさだろう。でも、どうしてそこに魅力を感じたのか?
そして表向きはそうだが、実は本質ではオリジナルもアニメもテーマとしてはしっかりと結びついている。
オリジナルではノスタルジィという「甘さ」がソレを抑えていて、うまく作品の魅力が輝いていたが、アニメではノスタルジィの「甘さ」を盗ってしまったがために、テーマが露出してしまい、人によっては訳が分からない感覚に陥る。しかもソレは猛毒だ。
『The Soul Taker 〜魂狩〜』より
岩井監督や大根監督のファンではないが新房監督のかなり薄いファンである自分がここではその考えをそれなりに書いてみたいと思います。
こちらもお願いします。
ここから先はネタバレになります。観てない方にはおススメできません。
サロメはファム・ファタールの原点である「運命の女」であり「男を破滅させる女」でもある。
オリジナルもアニメもなずなは典道という男を破滅させる点では一緒だ。なずなは典道という男の心を殺している。オリジナルもアニメも「あの時」のなずな以上の女性に巡り合えないだろう点でだ。しかも、オリジナルでもアニメでもどんな「もしも」が繰り返されるとしても、なずなと一緒になれるはずのそれは「可能性のひとつ」でしかない。のを見せているのだから、それが叶う確証はない。その残酷さは倍だ。そしてそれは得られないからこその「美しさ」だ。
このドラマの本質は、恋愛が成就する話や、自分の思いが他者にも届いていた、といった類ではない。一人の男が女によって破滅する様を楽しむ映画だ。『君の名は。』や『世界の中心で、愛をさけぶ』で観る向きではない、どちらかといえば『めまい』や『郵便配達は二度ベルを鳴らす』に近い。つまり若者向けではない!ずばりオッサンやインテリ向けだ!!
ここから後述の部分に入ると、そんな酸いも甘いも噛み分ける(?)オッサンやインテリならともかくビジネスとしてのターゲットである、これから未来のある若者にそんなものを見せてどーするの?だよ。観終わった後「絶望した!!」とでも思わせたかったのか。
しかも、オッサン向けとはいえノスタルジックやスリラーなどの「味付け」をしていないから。いきなり出されてどう食していいのか分からない料理と同じでもある。どこを、どう楽しんでよいのかが分からなくて混乱する。アートならともかくエンタメでソレをするのは努力が間違っているとしかいえない。
しかし、裏を返せばそれがシャフトでありまた新房昭之監督の特徴であり本質かもしれない。『The Soul Taker 〜魂狩〜』。 ーー実は観終わった後に真っ先に思い出したのは、このアニメだった。ーー からのアヴァンギャルドで、どこか醒めていて虚無感すら感じられるその作風は『月詠(つくよみ)』や『ぱにぽに』で得た「笑い」を通すことで他との通俗性を確保したし、ダークだといわれる『まどか☆マギカ』や『化物語』シリーズにも、キャラ設定の妙もあって台詞のやり取り等で、それは感じられた。しかし、今回のアニメの台詞はオリジナルを意識し過ぎたせいかお得意であるはずの「笑いの」部分が成立せずに、いわばスベっている。それでオリジナルにあった猛毒がさらに露出した感じだ。
少なくとも声やデザインが問題の本質ではなく、観ている誰もがオリジナルにあったその猛毒にやられた。だけだ。そしてその猛毒をアニメは別の何かで希釈できなかったからの不評なのだ。それだけなのだ。
映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』オリジナル・サウンドトラック
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