ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
突然変異で誕生した炎を操る人種「バーニッシュ」の出現で、未曾有の大惨事が起こり、世界の半分が焼失した。30年後、一部の攻撃的なバーニッシュが「マッドバーニッシュ」を名乗り世界を荒らしていた。それに対処するのは高機動救命消防隊バーニングレスキューであり、ガロ・ティモスはそこの新入りだ。信条は「燃えて消す」。そんな彼に対抗するのはマッドのバーニッシュの首魁であるリオ・フォーティア。彼はバーニッシュの本能である「燃やさなければ生きていけない」を告白。かくして2人は譲れない信念でぶつかることになる。
今石洋之監督
このアニメはCGとのマッチングのための大胆な配色で話題になったのだけれども。配色アイディアそのものは今石監督のテレビアニメ『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』で既にやっているし、その原点は『パワーパフガールズ』なのだろう。なのだけれど個人的には、その前に『スパイダーマン: スパイダーバース』の強烈なインパクトをくらったために霞んでしまった感じだ。
ついでに余談だが、『スパイダーマン: スパイダーバース』をどう思うのか?についてなのだが、現在は保留中だ。技術が凄いのは分かるが、それに感心しているのか感動しているのかが自分でもよく分からないのだ。感心と感動は似ているが非なるものなので、感心は「知識と記憶の更新」だが、感動は「心の揺さぶり」だからだ。
本題に戻ってドラマは昔ながらのSF物語の換骨奪胎だ。脚本の中島かずきは今石監督のテレビアニメ『キルラキル』でイギリスのSF作家バリントン・J・ベイリーの『カエアンの聖衣』を作品に組み込んみせた。今作『プロメア』では昔からあるミュータント物、とくに漫画家竹宮惠子(旧:竹宮恵子)のSF『地球へ…』とアメリカのSF作家アイザック・アシモフの『神々自身』の二つアイディアを組み込んだ。
そうしたSFドラマに、この映画は、新たな見所と売りをプラスした。簡単に云えば「喋繰り」だ。自分はそこにこの映画の見所を感じてしまった。
実は初観の時、状況だけではなく自分の苦手な感情も台詞で説明しているのに、それに抵抗感どころか心地よささえ感じてしまったし、また変な違和感も覚えてしまったので、この感覚を一旦は保留にして再度観直したときに気が付いた。「これオペラなんだ」と。
オペラとは文字通り役の感情を演者による歌唱で表現する手法で、この映画主演(声)の松山ケンイチ&早乙女太一&堺雅人の三人はそれで演じているから。観ていて気持ちの良い感覚になれる。多分、思うにそれは三人が中島かずきが座付作家として参加している劇団☆新感線の舞台に参加しているからだろうと思う。つまり、この映画は劇団☆新感線の舞台をアニメにした側面があるのかもしれない。-- 実は舞台を観ていないのでそこには自信がないのだけれども。
もっとも、オペラの感覚がするのは主演の三人だけで、その他の声は本職の声優が担当しているので、もちろん安定したものは感じたのだけれども、やっぱり違和感をどうしても感じてしまったのも確かだ。まぁ、ほぼ主演の三人が動いているのでそれほどのキズではないし、人によっては自分がケチをつけていると思われても仕方がない。-- 中島かずき脚本のアニメ前述した『キラレキル』や『天元突破グレンラガン』などを熱血マンガ風として受け止めていたところがあるので、そのへんの部分での違和感を感じてしまったところもあるのかもしれない。
でも、まぁ自分のモヤモヤに気が付いて、やっと書ける気分になったのも、また確かなのだ。
映画『プロメア』ロングPV 制作:TRIGGER 5月24日〈金〉全国公開