ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
レースに勝つための合併話でフェラーリにいいようにあしらわれたフォード社はル・マンで常勝フェラーリを倒して勝利を目指すことになった。依頼を受けたのは、元レーサーのカーデザイナー、キャロル・シェルビー。フェラーリを超える新しい車の開発と優秀なドライバーの獲得を必要と感じていたシェルビーは、昔からの知り合いで破天荒なイギリス人レーサーのケン・マイルズに声をかけてチームに引き入れる。限られた資金と時間、そして、一部上層部からの反発を受けながらもシェルビーとマイルズは数々の困難を乗り越えていくが……。
注意:できる限り内容への言及は避けますが、抵触しそうな可能性もあるので、純粋にこの映画を楽しみたい方には、ご遠慮くださるようお願いします。
今年ベストキターーーーーー ‼
お前はメカさえ出てれば、すべて褒めているんじゃないのか?の疑問についてはこう答える!
はい、まったくもってその通りですけども、それが何か?
しかし、タイトルの『フォードvsフェラーリ』はちょっと誤解を招くところがある。中で描かれているのはキャロル・シェルビーとケン・マイルズを中心で、どちらかといえば『チーム・シェルビーvsフォード』の展開なのだ。原作本のタイトルをそのまま使っていることからくる印象とのズレが起きてしまうのは否めない。まぁ、どうみても京都太秦撮影所なのに、タイトルが『蒲田行進曲』(深作欣二監督)となっているモノと同じだと思うしかないだろう。どちらも面白いしな!
そして、 やっぱりこれは『コップランド』や 『 3時10分、決断のとき』などで「男の姿」を描いてきたジェームズ・マンゴールド監督らしい作品でもある。もう少し付け加えると「男に成れなかった男が男に成る」ドラマだからだ。マンゴールド監督の美学なのかもしれない。もちろんここではクリスチャン・ベールが演じるケン・マイルズのことをいっている。
実在のマイルズは国際プロレーサーを目指してはいたものの資金難や戦争で、機会を逸してアメリカ国内のレースSCCAで名を知られる、そこでシェルビーと出会い国際レース、ル・マンに参戦できるチャンスを掴む。この状況が、『コップランド』、『3時10分、決断のとき』を撮ったマンゴールド監督の琴線に触れたのは間違いない。そこで、この映画のマイルズを「どうやって男にするのか?」を中心にドラマ描く、ここでこの映画に組み込まれたのは、勝利ではなく「7000回転の世界」だ。
もっとも、これを言語化するのは難しい、ある意味で、身勝手で理解不能な「男のナルシズム」だからかもしれないからだ。あるツイートで気が付いたが、今でもカルト映画として覚えられている映画『バニシング・ポイント』のラストがこの感覚に近いし、日本人なら、マンガ『あしたのジョー』のラスト「真っ白」を思い浮かべても良いかもしれない。とにかく、そんな感覚だ。
そんな感覚を今作で共有しているのはマット・デイモン演じるキャロル・シェルビーのみだ。ある場面でシェルビーはそれをどうにか言葉にしてしようとするが、どうしてもできない。しかし、それでもいい。父の「生き様」を息子ピーターが憶えているのだから。それでいいのだと……。
とまぁ終始、男のドラマでした。あとマンゴールド監督は『シェーン』が大好きなのも。
参考
映画『フォードvsフェラーリ』をさらに楽しむためにケン・マイルズとは何者だったのか?| ENGINE WEB
FORD v FERRARI | Official Trailer [HD] | 20th Century FOX