えいざつき ~元映画ブログだったポエマーの戯言~

批評というよりも、それで思い出した事を書きます。そして妄想が暴走してポエムになります。

『GODZILLA』公開便乗:『ゴジラ』は核と放射能をどう描いたか。

注:ここでは原爆と水爆を核。放射性物質放射線放射能として表記します。また科学的と軍事的な視点については論じません。

GODZILLA』の便乗まだつづきます。

すべてのゴジラの原点である昭和29年の『ゴジラ』はどのように核と放射能という“怨念”を描いたか。
 
本題に入る前に日本にとって核と放射能が怨念として定着された事件として自分が思い浮かぶのが「第五福竜丸事件」である。
 
こ の事件は日本にとって核と放射能が広島と長崎だけの過去の出来事ではなく今なお続く切っても切れない存在として国民に浸透されていった。そのためにその後の国民的核アレルギーといわれる総意が定着してゆき、それを和らげるため国と一部の人達がどれほどの労力を使わなければならなかったのかが “運命”づけられたといっても良いのかもしれない。
 
映画にもなってはいるが気安くおススメできる作品ではない

 

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核と放射能が怨念と解釈されるためのフォローとしてもうひとつあげるのは昭和59年の『ゴジラ』(1984) ここではアメリカとロシア(旧、ソ連)がゴジラを倒すために日本政府に戦術核の使用を提案するのだが、その本心が都市で戦術核の影響をみたいからだ。つまり実験である。これは一部の日本の知識人がもっている懸念「広島と長崎は実験だったのではないのか?」を提示したものと思われる。


さて本題。日本国民の総意といわれる怨念を昭和29年の『ゴジラ』はどのように表現したかといえば、大きく分けて三つある。
 
その一:山根恵美子
この時代のモンスター&SF映画のヒロインの立場は文字通りの華としての役回りだが、『ゴジラ』での山根恵美子は各人物の“言い分”を聞くという重要な役割 をもっている。
 
ゴジラを殺すべきではない」と主張する山根博士。
「殺すべき」と主張する尾形。
「家族を殺された」信吉。
そして「核にと同じくらい危険な発明」をした芹沢。
 
と、山根恵美子はそこにいることによって“対話”を仕切る形式をとっている。これは、ゴジラという存在をただの化け物として描くのでは なく、人々から色々な発言を出すことによって、ゴジラが逃れられない業としての矛盾を封じ込めたものとして存在を示している。
 
その二:白熱光
光線とか熱線でも単語としてはどれでもよいけれど、大事なことは「生物なら絶対にできないことをする」行為である。ということだ。生物は鉄筋や戦車を溶かす ほどの熱を発するわけがない。わけがないのをゴジラは出した。これがゴジラが生物以外の“何か”であるの提示した。この大胆な映画的な飛躍が後の日本独自の怪獣の原点であり怪獣のモチーフを広げたのは誰でもわかるだろう。平成ガメラの1作目『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995)でのギャオスが動物ではなく怪獣なのだということを、あり得ない超音波で描写していることからも重要なシーンであることが認められる。
 
その三:乙女の祈り
ゴジラを倒すために危険な兵器の使用を芹沢に説得する恵美子と尾形。二人の言い分を認めながらも苦悩する芹沢に聞こえてくるのがテレビから流れる歌「乙女の祈り」で兵器の使用を承諾する流れは、ベースには恵美子に失恋した芹沢の傷心をしのばせてはいるが、大元ではかたくなだった芹沢の心を変えたのは「乙女の祈り」であるのはハッキリとわかる。そして、ラストに流れるのもこの歌なのだ。これが何を示しているのかといえばゴジラを凶暴な“何か”ではなく鎮撫(魂を鎮め る)する存在としてみせていることだ「ゴジラもまた犠牲者なのだよ」といっているわけだ。そして山根博士が言った「あの一匹が最後の……」の台詞はこのよ うな(核の使用)をつづけていれば必ず自らに返ってくる。と映画を観たものなら誰でも思う感想にみちびいていく仕掛けになっている。つまり「怨霊は無くな らない、忘れたらまた甦る」を示している。
 
 
もちろん今回のハリウッド『GODZILLA』のスタッフも原点の『ゴジラ』を当然、観ているだろうし、分析もしているのだろうが世界のマーケットを考えれば、狭いコミュニティでしか通用しない“情念”よ り人間どおしの共通のプロトコルになり得る“理性”を選ぶのは当然かもしれない。

しれないが、情念こそが世界のスタンダードになってほしいのが原点の『ゴジラ』の本題であるかもしれず……大多数の日本人の願いかもしれない。
  
 

 

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