希望の国(2012)
個人的な所感として観終わって放射能の影響に精神がおかしくなってゆく主人公達に対して周りの人々の反応に「どこかで観た」感があって、しばらくしたら「これは黒澤明の『生きものの記録』じゃないか」と思ったことがあった。
黒澤明が核と放射能についてかなりの批判をしていたことは映画ファンなら誰でも知っていたし、実際に『夢』でも2章にわたって放射能に対する批判の話をつくっている。
『夢』 は黒澤明の死に対する感情をつづったものだが、放射能をあつかった話は強烈だ。これに共感する人も多いと思う。
生きものの記録(1955)
夢(1990)
自分は、はじめは単にサラッと観ていたが、あるきっかけで黒澤明が放射能をどの様にイメージしていたのかを知ることができたので今回はその思い出を書いてみることにした。ヒントはリチャード・フライシャー監督の 『ミクロの決死圏 』にあった。
(略)選りすぐりの科学者グループが特殊潜航艇に乗り込み、ミクロ化して体内に潜入する(略)体中がムズムズして気持ちが悪くなったという。同型のミクロの潜水艇が、自分のからだの中を走り回っている錯覚に陥ったのだろう。『黒澤明VSハリウッド』より引用。
だそうで、人によっては失笑ものだが、これを放射能に置き換えると黒澤明に限らず一般的な日本人ならだれでも起こる反応だろうとわかるのは『希望の国』からもみてとれる。得体の知れない何かに自分の体を蝕んで変えてゆく感覚は恐怖の根源のひとつでもあり、つまり、決して他人事ではないのだ。
黒澤明vs.ハリウッド―『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて
- 作者: 田草川弘
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