ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[加筆修正有]
『007 スペクター』に関係した思い出話をします。
12月に公開される『007 スペクター』
ダニエル・グレイグは六代目ジェームズ・ボンドなのだが、007はシリーズをとおしてボンド役を演じてきた俳優によってシリーズの 「トーン」 が微妙に違っている。それはその時代と共にボンド像が変化しているのもしめしている。
だから、今回は自分なりの各ボンドの特徴を書いてみようと思います。
〇 ショーン・コネリー
一言でいうなら「ワル」
コネリーボンドは殺しは当然だが、任務遂行&解決に美女を使う。今なら非難轟々の設定だが、これは当時の男性にとってのヒーロー像で、それは漫画の『ゴルゴ13』『課長島耕作』等の初期に影響をあたえている。要するに「大人の不良」というべきものなのだが、それを究極的に磨き上げたのがコネリーボンドの魅力でもある。60年代は世界をまたに駆けて美女といちゃつくヒーローが男性の「あこがれ」だったからだ。
代表作 『ロシアより愛をこめて』『サンダーボール作戦』
〇 ジョージ・レイゼンビー
一言でいうなら「死別」
レイゼンビーボンドでは美女を翻弄していたコネリーボンドと対照的に一人の女性に恋をして引退もほのめかすが宿敵のプロフェルドに殺されてレイゼンピーボンドはボンド史上はじめて「悲しむ」のである。レイゼンビーはこれ一回だが、ファンには重要な作品であるらしい。ちなみにこれを観ておくと『ユア・アイズ・オンリー』 (1981) や『消されたライセンス』 (1989) が少しだけ楽しめる。
一言いうなら「フラット」
ムーアボンドからより「大人の不良」から「誰でも楽しめる」ものとしてアクションと笑いが強化されてゆく。そのために徐々に荒唐無稽化してゆき、再びリアル路線に戻ったりしてムーアボンドはうつりゆく時代のトレンドや観客の好みに七転八倒する様が垣間見えるボンドでもある。それができたのもロジャー・ムーアの「癖の無さ」が功を奏して乗り切っただからだろう。
代表作 『黄金銃を持つ男』『私を愛したスパイ』
〇 ティモシー・ダルトン
一言でいうなら「重厚」
ダルトンボンドはボンド史でいちばん演技の上手いボンドだ。現実にそった「地に足のついたヒーロー」ができるとしてのダルトンだったし、実際に『消されたライセンス』のダルトンは良い演技をしていたが、映画自体がファンの「これはボンド映画じゃない!」と強烈に否定された。確かにボンドらしさが欠けていたが、当時から彼のキャラは男性の理想を表現するには時代遅れになっていたのだ。「理想と現実」に翻弄されたのがダルトンボンドともいえる。
代表作 『消されたライセンス』
〇 ピアース・ブロスナン
一言でいうなら「女難」
ブロスナンボンドの時代は女性がアクションの主役をする作品があたりまえになってボンド映画にもその影響が現われている。『ワールド・イズ・ノット・イナフ』 (1999) だと主役はまるでボンドガール。主役も悪役も霞んでみえるというヘンな作品だ。それでもブロスナンは誰もがイメージしているボンドが「現在で活躍するのならどうなるか?」をみせてくれたことによって昔ながらのファンとは別に新たなファンを増やした。
代表作 『ゴールデンアイ』
さて、ここまできてダニエル・クレイグのボンドはどうなっているのか?実はこのボンドは見事なまでに現代に馴染んだボンドなのだ。
〇 ダニエル・クレイグ
ルックが公開されたときファンから「これじゃない!」といわれたグレイヴボンドは『カジノ・ロワイアル』 (2006) が劇場公開されたらファンに認められた。甘いマスクではなくグレイグボンドは表向きは強面で非情にみえる。それと反対にドラマは「苦悩するボンド」だ。簡単にいうと「男のツンデレ」である。表向きと反するその性格の甘さが従来のファンの「理想」に繋がっており、そしてブロスナンボンドから目立ち始めた女性ファンがその甘さに好きになる二重の構造になり新規のファンを増やす状況につながっている。代表作 『スカイフォール』
単純な男性の「あこがれ」から皆に「愛される」へと変化したのが現在のボンド像なのだ。
最後に自分は『007 スペクター』が楽しみなのだが、今のうちに宣言しておこう
あいつの頭がフサフサだったら今回は……
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