ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
ノルウェーの科学者がある発明をした。それは人間を13㎝に収縮する技術だ。そこから人口増加による環境、食料問題を解決する計画が立ち上がり、一度縮めば元には戻らないのにもかかわらず志願者も増えていった。どこにでもいる平凡な男ポール・サフラネックは、少しの貯えでも裕福な生活ができると知りそれに志願するが……。
観終わって最初はこの映画が何なのかが分からなかった。SFコメディかと思えば貧困問題を持ち出して風刺か寓話でもやるのかと思いきや、環境問題にも手を出して何だかとっ散らかした印象だし、何よりもダウンサイズの意味が分からない?その設定必要?な感じだ。
それがしばらくして、ミルコヴィッチのパーティにいた船長のコンラッドを紹介されるシーンを思い出すと、どうやらジョゼフ・コンラッドの『闇の奥』をお手本にしているらしいのが見えてくる。『闇の奥』といえばある男が原住民から略奪をしている訳だが、原住民ではないにしろ、それに類する下層階級の人々も出てくるし、それにベトナム人のノク・ラン・トランが出ているからどうしたってフランシス・フォード・コッポラ監督『地獄の黙示録』を思い出すから同じだ。
ちなみに『闇の奥』は『ニーベルングの指環』にも繋がっているから、あのサフラネックの指輪にもかかっているのだろう。
『ニーベルングの指輪』といえば北欧神話であり神々の黄昏(ラグナロク)だ。そこでダウンサイズの意味が見えてくる。普通の人間が巨人族に変換できるからだ。もしかしたら南極とメタンとは大蛇ヨルムンガンドを意味しているのかもしれない。炭素ガスと違ってメタンは溶けにくいからだ。見ようによってはのたうち回る蛇にもみえる。つまり、環境破壊が深刻になり、もう「その時」が避けられないと知った時に普通の人間とダウンサイズされた人間との衝突が起こる。のを暗示しているのだろう。そしてクライマックスのあるシーンで美しく見せられる風景から暗示されるのは、そこから生き残った人がいる暗示だし、そこから連想するのはこの場所がホッドミルールの森であり別名、世界樹を暗示させてもいる。
つまり、「その時」をキリスト教的な視点ではなく、北欧神話の視点で語っているのが『ダウンサイズ』のテーマだ。
と観終わって数時間後にそんなことを考えたので、この映画の評価が高くないのは分かる気がする。そんな感想でした。

Downsizing: Music from the Motion Picture
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