ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
地球は危機に立たされていた!未知のエネルギーにより月の軌道がずれ地球に衝突しようとしているのだ。この原因を知ってたのは異端の科学者ザーコフ博士だけだった。エネルギーは惑星モンゴから発せられていたことを。前から予測していたザーコフ博士はそれを食い止めるべく宇宙船で旅立とうとしていた、その時に飛行機事故でたまたまザーコフ博士の屋敷にたどり着いたアメフトのスーパーヒーローのフラッシュと恋人デイルは巻き込まれてしまいモンゴ星へと連れてゆかれてしまう。
マイク・ホッジス監督
これから折を見て自分が知っているSF映画について書いてゆきます。『ダーククリスタル』の次は『フラッシュ・ゴードン』。
『フラッシュ・ゴードン』を制作したのはディノ・デ・ラウレンティス、個人としてはいわゆるトンデモやポンコツな大作を制作した印象はあるけれども、出身地イタリアでは映画製作者カルロ・ポンティと並んで(一時は組んでもいた)名作の制作したことで名を成しており、映画史では重要人物だ。
制作された背景としてはもちろん『スター・ウォーズ( エピソード4/新たなる希望)』の大ヒットがある。監督したジョージ・ルーカスが当初はこの『フラシュ・ゴードン』を映画にしたかったから。このエピソードがラウレンティスの耳に届いたかどうかは知らないがタイミングとしては、ここしかない。
プロダクションデザインを担当したのはフェデリコ・フェリーニ監督やピエル・パオロ・パゾリーニ監督とも組んでいるダニロ・ドナティなので、そのデザインは『スターウォーズ』や『ジェームズ・ボンド映画シリーズ』とは違ってキラキラで、そして一番の話題は音楽をロックバンドのクイーンが担当したことで。いわゆるスペース・オペラならぬスペースロックオペラな雰囲気をまとっているところだ。早い話が当時のSFブームだけではなくジョン・トラボルタ主演『サタデー・ナイト・フィーバー』からの80年代のディスコブームにも乗ったかたちにもなっている。だから内容そのもが緩くても逆に世界観とマッチしていたところがある。
特撮ファンSF映画ファンの売りには電子オプチカルプリンターでSFXが作られたところだ。当時は電気信号で記憶されるデジタル撮影ではなくまだフィルムを使ったアナログ撮影が主流の時代。SFXでの合成はオプチカルプリンターによる光学式を主に使われる。そして光学式の場合だと合成素材をいくつか作り出さないといけないのに対してテレビの合成、いわゆるクロマキー合成は合成素材を作らなくても済む。それを映画に使用したのが電子オプチカルプリンターなので、今のデジタル特殊効果の基幹のひとつにもなっている。
テレビの合成と書いたが、ハイビジョン以前のアナログ(走査線は525本)なのでそのままだと大画面には堪えられない。-- ちなみに似たような技術に『宇宙からのメッセージ』で使われたECGシステムもあるがこちらは走査線が655本でそれを電子ビームでフィルムに直接に焼き付けるものでこれもデジタル特殊効果の根幹のひとつだが、走査線が低いために大画面には堪えられないし発色もよくない。『宇宙からのメッセージ』がスタンダードサイスで公開されたのもその技術的な制約のせいだろう。-- しかし、『フラッシュ・ゴードン』で使われたテレビは走査線が4000本なので大画面に堪えられる。それをCRT(テレビ画面)から撮影用キャメラで接写する。
もっとも、確かに発色もよく大画面には堪えられるが、ビデオの弱点である遠近感が感じられない画になってしまうのが避けられないので安っぽさを感じてはしまうが、『フラッシュ・ゴードン』の場合はそれも含めて「いい味」を出していた。
結局、電子オプチカルプリンターはその後の主流にはならなかったが、そのあとにくるCGIを主にしたデジタル撮影技術のフィルムレコーディング -- フィルムの一コマ一コマにある粒状感を分析して焼き付ける技術なので遠近感は感じられる。-- によるデジタル技術の根幹の一つになったのは先に書いたとおりだ。もっともデジタル撮影が主となってしまった現在ではそれも懐かしいというしかない。
実は個人的にはビデオでこの映画を観て、そうした知識は後から知ったのだが、大作にもかかわらずチープさとクイーンの音楽が気に入って、サントラを買った思い出がある。それが、まさか『テッド』で再開するとは思ってもみなかったんだよなぁ。
参考
インターネット・ムービー・データベース
バンダイ シネフェクス10
バンダイ出版 宇宙からのメッセージ特撮の秘密