ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
公道自動車レースを題材にしたヒューマンアクション映画。世界ラリー選手権(WRC)への切符を手に入れようとする天才ドライバー檜山直純。彼をサポートするメカニックは兄である檜山篤洋。エキセントリックで強気の性格な弟・直純と慎重な兄・篤洋はレースの度に意見の衝突を起こし、かつて仲の良かった兄弟の姿はそこにはなかった。そんなある日ラリーの知識がない遠藤ひかるが直純の新しいマネイジメントとして入ってくるのをきっかけに直純と篤洋に変化が現れ、やがてチームにも最大の試練がやって来る。
この映画「理想のデートムービー」ではある。女性は主役の東出昌大と新田真剣佑の魅力を楽しみ、男性はラリーのカッコよさを楽しむという意味では、きちんと棲み分けができていて衝突がすることはおそらくない。森川葵が演じる遠藤ひかるはラリーの知識がないことから、この競技の説明係になっており、しかも直純と篤洋に共通するある人物の面影をダブらせている設定になっているから、二人が本音をポロポロと喋るのは、それほど無理があるとは思えない。
先に書いたとおり、東出昌大と新田真剣佑の魅力を楽しむ。この映画は東出と新田の「違う演技」を楽しむのがメインの見所だろう。新田は『ちはやふる』の綿谷新や『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』の虹村億泰など役柄ごとに身体ごと変えてくる演技だ。『ダークナイト』の主役を演じたクリスチャン・ベールと同じであり、その元は『レイジング・ブル』の主役・ロバート・デ・ニーロだろうが、おそらく原点は形式を排したメソッド演技法の発展からくる演技だ。はじめてマニュアル化された演技法でもあり、そこから感じる魅力でもある。
対する東出昌大は形式にのっとった演技をしている。つまり「自己を捨てずに役の感情が観客に伝わるよう」にする演技だ。メソッドより簡単そうに思えるが、「形式」の部分に正解が無いために、役者によって演技が微妙に変わって観客(と自身)に納得させるのが大変なところだ。乱暴な言い方をすると「芸」に近い。しかも、東出は『日本沈没』の田所や『激動の昭和史 軍閥』の東条などを「自身の魅力も残しつつ他の役も演技できる」 小林桂樹に近い演技のため。目だないかもしれないが、かなり上手い。それは『聖の青春』の羽生善治や『散歩する侵略者』の牧師を思い出してもらえばいいのかもしれない。
この対照的な演技力の二人が主役なのでドラマは恐ろしいほどベタだが、「ベタすぎて恥ずかしくて観れない」より「ベタベタだけど盛り上がる!」までもって行けているのは流石というしかない。
さらにラリーの描写も首都高速を閉鎖して純粋にタイム勝負のスペシャルステージ(SS)のシーンでリアルより「映画のウソ」を優先させているので、勝負のスリリングさよりもグラフィカル&スタイリッシュの良さでの「カッコよさ」を印象づけるようにしているのは察せられる。だから「ありえない」より「良い夢をみさせてありがとう!」までの感情にはもって行けている。そして、早い話がこれは架空のレースやメカを描いたSF作家高斎正風のSF映画でもあるので後半の強引な展開も自分は納得している。
まとめると傑作でも秀作でもないが、東出昌大と新田真剣佑のファンでメカモノ大好きな自分が面白かったら「それでいい!」で終わります。
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