ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
ナチス政権下のドイツで生き延びたユダヤ人迫害の実話を映画化。1943年6月19日、ナチスの宣伝相ゲッベルスは、首都ベルリンからユダヤ人を一掃したと宣言。しかし、実際は約7000人のユダヤ人がベルリン各地に潜伏しており、そのうち約1500人が終戦まで生き延びた。映画はそのうち4人の証言のインタビューと再現ドラマで構成されている。4人がどう感じていたのか?彼らを助けたのはどんな人たちだったのか?
森島恒雄 著『魔女狩り』には15から17世紀の西欧キリスト教国で起こった魔女狩りについて書かれている。印象に残っているのはそれを行った法皇・国王・貴族の権力者側だけではなく、それを支持し煽ったのは学者や文化人だったという事実と魔女と認定された(女性だけではなく男性もいる)人に同情や疑問を感じていたのは、直に彼等と接していた人々だった。
魔女狩りと同様に欧州では「最悪の記憶」でもある、アウシュビッツに象徴されるユダヤ人大量虐殺ホロコーストは知識として知ってはいたが、ユダヤ人がナチス政権下で7000人も潜伏していて1500人が生き延びたことは不勉強でこの映画ではじめて知った。映画ではそれを反ナチスだけではなく多方面の視点からみせている。彼らを助けたのは庶民だけではなく上級将校もいた。政治的信念だけではない個人的な感情でそうした行動をした人々があの時にも存在したのだ。本来ならそこで感動する。
はずなのだけれども、内容はインタビューと再現ドラマで構成されているので、何を主張しているのかは明確だ。「記憶の継承」だ。なので映画としてどうこうより歴史の一部を様々な視点からできうる限り後世に残しておこうという「知の胆力」というべきモノを評価すべきなのかも……。
そして当然のごとくに、現在の自分たちにそうした行為が「できるのか?」のかを問いかける構造にもなっている。それはかなり重い問いかけでもある。
ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌 (中公新書)
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