ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
D・F・ジョーンズのSF小説をジョセフ・サージェント監督が映画化。アメリカとソ連(現:ロシア)が核兵器で勢力の均衡を図っていた時代。アメリカでは軍事システム全てをコンピューターで管理するコロサスを完成して起動させた。ところが、ソ連にも同様のガーディアンが存在することをコロサスが指摘、コンタクトをとりたいと提案。生みの親でもあるフォービンはそれを認め。コロサスとガーディアンは同期した瞬間。恐るべき事態に人類は襲われる。
購読しているふかづめさんのブログにジョセフ・サージェント監督『サブウェイ・パニック』評を読んでしまったら、自分はこの怪作『地球爆破作戦』を書くしかないだろう!のノリで、久しぶりに観直した。
ところで自分はAI(人工知能)が人間を凌いで人類を支配するなんて信じてもいないし、技術的特異点(シンギュラリティ)でポストヒューマンが誕生するなんてのも恐れてもいない。何故なら現在のAIはフレーム問題を解決できるメドさえ立っていないから。
フレーム問題をかなり雑にいえば「現在のAIはひとつ要素だけなら、その問題を解決できるが、二つ以上の要素になると機能停止する」から。チェスや将棋やクイズや東大入試などはひとつだけの要素だけだが、ふたつ以上の要素がある現実はそうはいかない。もっともっと雑にいうとAIは「覚悟と決断」ができない。
だから自分はフレーム問題が解決されないとAIはポストヒューマンまでいかないと確信しているし、仮にフレーム問題を解決できたAIが誕生したとしても、それは「感性と個性」を獲得するとも確信しているから、もしも敵対するAIが誕生しても、それに対抗できる方法もあるだろうとも考えている。まぁ楽観的。だから、その系譜でもあるアレックス・ガーランド監督『エクス・マキナ』などは演出センスなどは独自なモノを持っていると思ってはみても、物語やドラマは他の感想と違って「童貞(気質)の主人公がAIにたぶらかされる」くらいの感想しかもっていない。
長々と関係のないこと書いてはきたけれども、要は自分としては『地球爆破作戦』の物語の部分には興味がなくて、そして久しぶりに観直しても感想は初観のころからほとんど変わってはいない。つまり前半のガーディアンとコンタクトしようとするコロサスの挙動と後半のシュールな展開だ。
前半、誕生したコロサスがガーディアンとコンタクトを取ろうとするシーンはモニター画面がチカチカしたりプリンターからプリントがダッダッと出ているだけなのだが、それが緊迫感として描写していてシャープな感すらある。-- もしかしたらこの脚本を書いて後になって『チャイナ・シンドローム』を撮ったジェームズ・ブリッジスの腕もあるのかも知れない。 -- 自分がジョセフ・サージェントを知ったのが、マイケル・ケインが主演男優賞を受賞していたのに撮影中で欠席したので名を知られている『ジョーズ'87 復讐篇』だったので、『サブウェイ・パニック』同様こんな風に演出できるのかを、思い出したから。どうやら『フラットライナーズ』や『フォーリング・ダウン』を撮って後に『バットマン & ロビン Mr.フリーズの逆襲』を撮ってしまったジョエル・シュマッカー監督と同じ道をジョセフ・サージェントも辿ったとしか思われない。
後半の展開は、もちろん核兵器という人類のキン〇マを盗ったコロサス(&ガーディアン)やりたい放題し放題に対して反撃する方法が膨大なタスク処理をコロサスにさせるモノだったり、シュールさの部分はコロサスのキ〇タマである核兵器を使えなくするために点火装置をコッソリとダミーと交換するという件だ。映画が公開されたのが冷戦下のデタントだというのを考えに入れても自身で自国の兵器を使えなくする。なんて本末転倒な展開が繰り広げられるからだ。
そして、お芝居だったのにムフフ♡なシーンもある。今では絶対にできないシーンだ。
ラストはあの頃の映画の雰囲気を知っている人なら「そうなるな」で収まるのが、この『地球爆破作戦』というSF映画だ。以上で終わる。
補足:この『地球爆破作戦』を完全に意識して撮られたのがジョン・バダム監督のSFスリラー『ウォー・ゲーム』だ。舞台が同じだし、この映画のジョシュアの設定はどうみてもコロサスを意識している。違うのは当時社会に現れ始めたハッカー(厳密にはクラッカー)を題材にしているのと映画で一番リアルにAIを描いているところか。機会があればこれも書いてみたいと思います。
Colossus: The Forbin Project (1970) - Official Trailer (HD)

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