ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
香港に新しく建てられた高さ1000メートルを超える超高層ビルである「ザ・パール」。そこの安全システムのチェックを任されたのが、かつてFBIの人質救出部隊のリーダーとして働いていたが任務中に左足を失ってしまったウィル・ソーヤーだった。彼は家族を伴って「ザ・パール」に滞在していたが、仕事でそこから離れていた時に何者かに襲われて、それに呼応するかのように「ザ・パール」で火災が発生する。愛する家族が取り残されていると知ったソーヤーは救出にむかうが、そこには国際的犯罪組織が暗躍していた。
ポップコーンムービーと呼ばれているジャンルともいえない名詞がある。かつてはジェットコースタームービーと言われていたモノだ。映画ファンには愛称、シネフィルでは蔑称で語られるややこしい名詞だ。ただ定義は「頭を空っぽにして楽しめる」映画が共通であるのは確かだ。
そんなポップコーンにも盛られたカップによって出来上がりが違うことがある。コーンが弾けずに残っていたり、味がポップコーン全体にいきわたっていなかったりするものもあったりもする。映画でいえば、気象アクションの『ジオストーム』や鮫アクションの『MEG ザ・モンスター』などがそれにあたる。
『スカイスクレイパー』はコーンの残しや味に不均等なところがない見事なポップコーンだ。『タワーリング・インフェルノ』、『ダイ・ハード』、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』は観る前から予想はできたが、まさかそこに『燃えよドラゴン 』をぶっこんで来るとは……。
それだけではない。いわゆる「パパ飛びまーす」の状況はハリソン・フォード主演の『逃亡者 (1993)』の引用かつ応用だし、「どうしてその場所にそんなモノがある!」はスタートレックのパロディ&オマージュの『ギャラクシー・クエスト』だし、女殺し屋のスタイルや妻と息子が炎の中を落下してゆくシーンは韓国映画『悪女/AKUJO』と『ザ・タワー 超高層ビル大火災』からの引用かつ応用するという。気づかないだけで他にもなにか引用(&応用)しているのかもしれない。
個人的にはハッカーをすぐに退場 -- 映画的な省略とはいえ最近のハッカーを魔法使いのごとくな存在として描くのには飽きていた。-- させたり、いわゆる「足を引っ張る愚か者」がいなかったりすることで、ディザスターよりも「難関をクリアする」アクションRPGの話運びになってスリムかつタイトになり、ビジュアルもトロフィーを思わせるザ・パールの外観&コネリー・ムーアのジェームズボンドを思わせる内装とか、森林火災 -- 何をいってるのか分からないかもしれないがそもままだ。-- 等々、面白い画があったり、また義足などの小道具によるアクションなど随所に小技が効いていて最後の最後まで楽しませてくれる。まさに最後の一粒まで食べられるポップコーンだ。
しかし、やはりそれはポップコーン。目的は主演のドウェイン・ジョンソン活躍させるスター映画のためなので、それ以上は求めても無駄だし、また新しさを持ち合わせてもいないから、数か月後には忘れ去られてしまうだろうが、「102分という上映時間を最後まで楽しませる!」というラインはキチンと守っている。
そんな映画の脚本&監督は「まあまあ楽しめた」の『なんちゃって家族』の
ローソン・マーシャル・サーバーであり、「何も考えずに面白い」の『セントラル・インテリジェンス』のローソン・マーシャル・サーバーであり、これもローソン・マーシャル・サーバー監督作だ。この名前は忘れずに憶えておくべきだ。きっと次の映画も良いポップコーンを食べさせてくれるだろうから。
あんた最高のポップコーン作り師だよ!(妙な締めで終了)
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