えいざつき ~元映画ブログだったポエマーの戯言~

批評というよりも、それで思い出した事を書きます。そして妄想が暴走してポエムになります。

『search サーチ』の超ネタバレギリギリの情報弱者、略して情弱なりの批判

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]

 

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www.imdb.com

 

全編PC画面のみで展開する異色ミステリー。妻を亡くしたデビッド・キムは娘のマーゴットと二人暮らしだ。関係も良好。そんなある日マーゴットが行方不明となり、警察で担当のヴィック捜査官のアドバイスでマーゴットの行方をネットから探し出そうとするが、そこで知ったのは父が知らない娘のもう一つの姿だった。

 

 どうも語りづらい映画ではある。ネットでは傑作の評価が大きいのだが、自分には「テーマのためにその手法を選択」したのではなく、「手法にテーマを無理に入れた」感がして、どう見ても傑作には見えず。かといって失敗作でも駄作でもなく、無難に収めた「普通」以外の感想しか湧かない。チョットだけ褒めると「お題を出されてそれをうまくやり遂げた」感しかない。付け加えれば習作だ。

 

しかし、それは自分が情報弱者。略して情弱なのが大きいかもしれない。

 

まずは起。娘の成長と妻が病で亡くなるまでがPC画面上に映し出される。いわゆる回想シーンで、どうやらキムパパの記録を娘が見ている風なのだが、これが説明的。もちろんこの部分がないと後半への謎解きと感動が面白くならないのは分かるのだが。

 

次に承。ここはキムパパの視点になる。娘の失踪に気が付いたキムパパが、捜査官に連絡。そこでのアドバイスで娘の痕跡をパソコンから辿ってき、そこから父が知らない娘の姿が露わにされてゆく過程が観られる。

 

三番目は転。失踪の事件性が高くなり公開捜査になるのでPC画面(正確にはPCだけではなくデジタルデバイス全般なのだが、そこは「細かいことは」てってことで無視)に報道が映し出されたり、承でキムパパに対して娘を知らない同級生がSNSで同情的な事を言ったりしてイイネをもらったりの「負のネットあるある」を描写してから、ある人物が失踪に関わっていると思い問い詰めるとそこではじめて娘の本当の姿を知ったり、そして怒涛の解決へと向かう。

 

最後は結。PC画面に壁紙が表れて終了。

 

さて、素朴な疑問。「転の視点は誰の視点なのかが分からない」だ。キムパパではないのは分かる。だって報道にキムパパが映っているから。

 

娘の視点でもないのは一目瞭然だ。

 

それでは犯人の視点なのか?そうでないのは、そこに犯人も映っているから。

 

「キムパパのPCだからキムパパか娘の視点なんだよ!」ってことになると、これは後でキムパパか娘が観たことになるので、起と同じく回想シーンになる。となると……

 

ミステリーの大部分(謎解きを含む)が回想シーンってのはどうよ!

 

ってことになる。

 

ドラマならそれもアリだし、ホラーやSFならそれもアリだろう。しかし、これはミステリーだ。なんの断わりもなしにいきなり回想シーンを入れると「何でもあり」になってしまいミステリーのロジックは破綻する。アンフェアだ。

 

いや、普通に時系列で繋いでいるだけだろう。とは考えないでほしい。これが回想シーンでなく全編でそれなら、それは登場人物以外からの視点、別の高みからの視点、ミステリーではやってはいけない、いわゆる神視点をやっていることにもなるからだ。やはりアンフェアだ。

 

ミステリーは謎解きに「参加」するからミステリーとして楽しめるのであって「傍観」してしまうのは、ミステリーとしては失敗以外のなにものでもない。

 

いや、これは謎解きのミステリーではなくて不安を煽るサスペンスなんだよ。と反論するなら、謎解き(犯人を知らせる)は中盤あたりで終わらせるのが当然だ。しかし、それをしてしまうとテーマの軸はブレて、SNSを中心とした「負のネットあるある」が描けなくなってしまうので、そうはしなかったと考えるしかない。

 

つまり、謎解きと親と娘のドラマとネットあるあるの三つが整理されずにゴチャゴチャと描かれているだけなのだ。通常なら駄作、良くても失敗作になる。

 

もっとも、悩ましいのはこの映画がPC画面のみで進行しているところだ。その新しさで当然の常識が通用しなからだ。現に終了後に自分の周りでは「面白かったね」なんて声も耳に入ったのだから。もしかしたら、これを純粋に楽しむにはゲームの素養が必要なのかもしれない。そして、その素養が自分にはない。ゲームはスーパーファミコンPlayStation2までしか遊んでいないし、マルチウィンドを使いこなす能力もないからだ。

 

しかし、あえて今回は批判的に締める。だって自分は情報弱者、略して情弱だから。

 


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