えいざつき ~元映画ブログだったポエマーの戯言~

批評というよりも、それで思い出した事を書きます。そして妄想が暴走してポエムになります。

『パッドマン 5億人の女性を救った男』ネタバレ有りでチョコッと解説してサラッと感想

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]

 

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www.imdb.com

 

トゥインクル・カンナー著 短編小説集の一編であり、実在するアルナーチャラム・ムルガナンダムの活動をモデルにしたヒューマン映画。インドの小さな村で修理業を営むラクシュミは最愛の妻との新婚生活ですべての女性が貧しさで生理用ナプキンが買え得ず不衛生な布で生理を使用していることを知った。そこでラクシュミは妻のためインド全ての女性のために安価で清潔なナプキンを開発しようと試行錯誤をするが、その行為が村の人々に知れ渡り、ついに村を追い出されてしまう。それでもラクシュミは諦めずに困難と誤解に遭いながらも理想の安い生理用ナプキンを作り出そうと奮戦する。

 

 SF作家 谷甲州の知り合いの知り合いにこんなエピソードがある。

 

かつて1960年代後半から70年代にかけて千葉県成田市に建設しようとしていた空港を阻止する反対運動、成田闘争があった。それらとは全然関係のない技術者が反対派に頼まれて応援に行って、飛行機を飛べないようにする鉄塔を建てたが、現場監督の感覚で立派に建ててしまった。というエピソードだ。この映画を観て思い出した。

 

そんな技術者についてまわる性の部分と愛妻家の部分が合体したのがこの映画だ。そうゆう意味では宇宙計画に携わった黒人女性達の活躍を描いた映画ドリームと同じ「科学賛歌・技術賛歌」の要素を強くもっている。自分が気に入っている部類だ。

 

物語はある男が禁忌を犯して故郷を離れ各国を流転して持ち前の正義感で悪を倒して故郷に戻る。という、古典的な貴種流離譚の展開をなぞっている。つまり『パッドマン』はモロにヒーロー映画なのである。

 

だから、実話の映画化なのだが、相当に脚色はされている。モデルになったムルガナンダム妻と離婚(工科大学コンテスト優勝の後に元に戻っている)もしているし、家族も離れていったが、流転なんてしていないし、生理用ナプキンの要である吸水性の高いセルロースファイバーの知識を手に入れたのは国際電話をかけまくって分かったが、加工方法が分からずに4年以上も試行錯誤をした結果なのだから。クライマックスもお手本(TED (カンファレンス))はあるが、実際に行っているわけではない。

 

あと、映画ではサラッと語られていただけだったが、ラクシュミの活動が事業へと変わる際に出た融資話は当時発展途上国で広がっていたマイクロクレジットマイクロファイナンス社会的金融のシステムが関わっている。

 

そして、最大のウソ(脚色)は後半の重要人物である、若くて聡明な女性パリーだ。ラクシュミの安い生理用ナプキンを女性たちに普及させるのは彼女の尽力のおかげであり、淡いロマンスの展開にもなる。テーマがブレかかる部分だし、正直に自分もその辺は「昭和のドラマやな」とツッコンでいたのだが、パリーが「理想化された女性」になったのは分かる。彼女は「表には出せない人々」の象徴なのだと。

 

韓国映画タクシー運転手 約束は海を越えては韓国で実際に起こった光州事件を描いた実話ベースの映画だが、クライマックスに唐突にアクションシーンがはじまる。そうなったのは、おそらくそれはあのシーンを忠実に描くと現在でも困る人々がいるからだ。だから、それらの人々に敬意を表しながらもファンタジックで派手に演出した。

 

アメリカ映画パトリオット・デイも実際に起こったボストンマラソン爆弾テロ事件を題材にした実話ベースの映画だが、犯人の特定に繋がったのはマーク・ウォールバーグ演じる刑事の記憶力によるものだとウソをあえてやっている。これも忠実に描くと困る人々がいるからだ。だから、スターのウォールバーグが演じることで敬意を表している。

 

これらを踏まえ、かつ、映画前半で描かれていた穢れの部分を思い出せばれば。パリーの設定が「実際にムルガナンダムに協力したが、公には名が出せない人々(おそらく多くは女性)の総合的イメージ」だということだ。そういったマスのイメージをパーソナルに収縮したのが彼女だ。そうゆう視点でみればテーマのブレも修正されてもよいのではないか。映画で描かれた事柄は現在も存在していることなのだから。

 

でも、自分もこの事実を知らなかったし、ムルガナンダムの業績を知ったのはこの映画からだ。

 

それに後半に入る前に表示されるインターミッション(intermission)の文字でどうやらこれもアメリカ公開用に編集されたもので完全版はないらしい。だから、この考えが正しいのかはわからない。

 

しかし、それでも充分に楽しめたし、パッドマン~(^^♪ と 口ずさんでいるオッサンがいたら、それは自分だ。

 

参考 

SFアドベンチャーNo.91

http://ttps://en.wikipedia.org/wiki/Arunachalam_Muruganantham

彼はいかにして「生理用ナプキン」で世界を変えたのか? | 「月経男」とよばれたインド人 | クーリエ・ジャポン

 


PADMAN Official Trailer | Akshay Kumar | Sonam Kapoor | Radhika Apte | 9th Feb 2018

 

  

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