ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
ドン・キースと米海軍潜水艦の元艦長ジョージ・ウォレスによるベストセラー小説の映画化。アメリカ海軍原子力潜水艦<タンバ・ベイ>が爆発したロシア近海で消息を絶ち、その解明と救助を滅入れされた攻撃型原子力潜水艦(ハンターキラー)<アーカンソー>が招集され現場に向かう。艦長は士官学校卒ではない現場から艦長へと昇進したジョー・グラス。到着した海域では何者かに撃沈された<タンバ・ベイ>ともう一隻、内部から爆発したと思われるロシア海軍原子力潜水艦の残骸があった。一方、ロシアの軍港で軍の一部がクーデターを起こしロシア大統領を監禁する。一触即発の戦争が勃発されかねない情勢下でグラス艦長の<アーカンソー>に前代未聞の命令が下された。
きたー、今年ベストキターーー!!
ただ、この面白さを客観として言葉にするのはかなり難しい。自分が禁句(使わないわけじゃないぞ!)にしている「平成最後」とか「21世紀最初」とかを使いたくなるぐらい。この映画に感動しているのは個人としての情動だけからだ。
だから、当然に個人的なくすぐりが多い。潜水艦映画の『原子力潜水艦浮上せず』や『レッド・オクトーバーを追え!』ではまだ出たてのペーペーだったDSRV(深海救難艇)が今作では大活躍して「ベテランになったなー」とかってにオッサン感慨モードになったり、『クリムゾン・タイド』でちょい見せていたを近接信管による魚雷爆発をここではバンバン使ったり、原作からのオリジナルドローン兵器<シースキャン>を投入して ワクワクしたりでチョー楽しい。
そして、最大の見せ場はADCAP魚雷(Mk48 )が活躍するシーンだ!この魚雷は一度で目標に命中しなかった場合でも自律的に再攻撃を行うことができる性能があり、ここでもその威力を充分に堪能できる。もちろん、映画初だ。
お前の映画史はどうなってるんだ?のツッコミはいっさい無視だ!!
しかし、この映画に対する批判も分かる。結構にアナクロなドラマでもあるからだ。
だが、そこがいい。……すごくいい。
実は原作はトム・クランシー作品を強く意識したテクノスリラーなのだが、映画ではジェラルド・バトラーが演じるジョー・グラス艦長に焦点を当てて、-- この映画はもう一人主役がいて、それはSEALsのビーマン隊長なのだが、ここでは割愛する -- 強引に感情をウェットに向けてきている。そして、このジャンルの好きな人ならグラス艦長の設定でピンとくるのは古典的な傑作『眼下の敵』の主役だったロバート・ミッチャムが演じるマレル艦長をお手本にしているのに気が付くはずだ。
『眼下の敵』のマレル艦長は民間出身の新任者であり、最初はその能力を疑問視されるが、戦闘が続くにつれて信認を勝ち取ってゆくところは、『ハンターキラー』の士官学校卒でない新任のグラス艦長と同じだし、何よりラストシーンでの締めが、両作を観ていた人なら絶対に「ああ、これは『眼下の敵』だわ」と唸ってしまうのは当たり前だともいえる。
そして『眼下の敵』といえば、駆逐艦VS潜水艦の心理戦を通して敵どおしにもかかわらず、そこに互いを認め合う中世の騎士道精神にも似た交流が生まれるのも魅力でもある。
だから、『ハンターキラー』でもグラス艦長とアンドロポフ艦長にそれが生まれるし、何よりも、この陰謀を企てた男達が騎士道精神にも反する行為で断罪されるのはドラマとしては必然でもあり帰着でもあるのだ。
『ハンターキラー』でもロシア大統領を警護するSPに忠節を感じさせるキャラづけをして騎士道精神を協調しているところからも分かる。
だからこそ、人によっては「オイオイ」とツッコまずにはいられない、あのクライマックスに(自分が)爆泣きするのも当然だ!
外側にハイテクな外装をほどこしていても、その中身は熱い古典的な騎士道物語を内装しているのが、この『ハンターキラー 潜航せよ』だ。
無論、小さなツッコミどころも「( ゚Д゚)ハァ? 聞こえんなぁ~」ですべて押し通す!
最後の締めはこれだ。
ウラー !!
Hunter Killer (2018 Movie) Official Trailer – Gerard Butler, Gary Oldman, Common