ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
アメコミの人気ヒーローであり、アベンジャーズを中心としたマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)に参加した、『スパイダーマン ホームカミング』の続編。『インフィニティ・ウォー』、『エンドゲーム』で様変わりした世界にもかかわらず、スパイダーマンとして活躍する十代で高校生でもあるピーター・パーカーの目下の関心は休みに学校の友人たちとのヨーロッパ旅行で好意を抱いているMJと恋人になること。しかし、新たなアベンジャーズを作ろうとする ”S.H.I.E.L.D.”の元長官ニック・フューリーがピーターに迫る。
ジョン・ワッツ監督
◆まず、最初にお断り
一応、今回も本筋には抵触しないように心がけるが、今回の『ファー・フロム・ホーム』(以下、FFH と略)は解説・説明するだけでもネタバレになる可能性が大という、厄介なシロモノだ。だから今作をまだ観ていない方は遠慮したほうがよい。
また通常のスクリーンで観てしまっていながらもなんだが、今作は『ドクター・ストレンジ』と同じく通常のスクリーンよりもIMX3Dで観た方が面白さが倍増するので、そちらを選択した方が良い。
言ったぞ!
言ったぞ!
言ったぞ!
言ったぞ!
◆貴種流離譚、原点回帰
前作『 スパイダーマン ホームカミング』がスパディが「親愛なる隣人」になるドラマだったのに対して『FFH』とそして次作であきらかになったのは、マーベルが新たなユニバースで目指す目標は、スパイダーマンを最終的には英雄として描くことであり、そのために貴種流離譚のドラマを組み込んできたところだ。
『FFH』でのスパディは貴人で貴種ありなのだ。それはアイアンマンことトニースタークの貴種であるということだ。もちろん二人に血の繋がりは無いので精神的な意味での貴種になる。
ここで映画&MCUファンに散々に入れられた「トニー、騒動の元はみんなお前やろ!」なツッコミも貴種流離譚ではよくあるエピソードのひとつとして存在するので「親の因果が子に報う」の諺にあるとおり、今作でのスパディはいわばトニーの尻拭いをする。
もちろん、スパディことピーターにも成長のドラマはある。ヨーロッパ旅行でMJと良い仲になりたいピーターは表向きは明るく振る舞っているが、その実、トニーの喪失を耐えきれない若者でもある。その影響はスパディの特殊能力である、危険を察知するスパイダーセンス --今作での字幕では別の言い方をしていた -- を無くしてしまうほどの強烈さだ。だから、本来なら見破れるモノ見破れない。そこからすればピーターがスパイダーセンスを取り戻すことが、トニーの遺産(精神的なものも含む)を受け継いだことになり、ピーターの成長が判る仕掛けになっている。そして、次のユニバースでのスパディの立ち位置がアイアンマンと同じところにいるのが見えてくるし、つまり……
やがて現れるであろう次世代のアベンジャーズ(仮)とスパイダーマンがリンクしはじめた。ということになる。
こうまで手の込んだことをするのはファンからは「親愛なる隣人」として思われているスパディをアイアンマンやキャプテン・アメリカやソーと同じ位置にするために、つまり神話的伝説へと導くための布石ととって良いだろう。というかそうとしか思えない!
だから、神話的伝説を完成にするためにスパディにはさらなる艱難辛苦(かんなんしんく)が待ち構えているのは当然なのであり、あのラストシーンなのだ。
もっとも、内容は甘酸っぱさがある青春モノであり、描き方もコミカルでポップだ。神話性や貴種流離譚なんて露にも思わせいないのが巧みだ。次作も必ずなる重苦しいシリアスをコミカルとポップで描き切ったらまた痛快な作品になるかも知れない。
そして、この『FFH』はこれからのMCUにとって凄いことを成し遂げてもいる……
ファンの期待値というハードルを下げることなく、原点回帰に成功したからでもある。
原点回帰とは、新たなユニバースのためアベンジャーズの原点でもある2008年の『アイアンマン』からやり直すということだが、事はそう簡単じゃない。
何せ『アベンジャーズ エンドゲーム』からまだ2か月しか経っていないのだ。シリーズの消失感もまだ収まってはいないし、悪役のインフレもまだ収まってはいない。そんな雰囲気のなかで新たなユニバースをスタートさせるのは本来は無茶なのだが、今作はある奇手でそれを乗り切りファンの気持ちのリセットに成功した。
そして、やっぱりMCUらしく現代社会を反映させるためにモチーフに取り込んだのは現代世界を覆いつくす勢いのある。嘘を信じさせるという、もう一つの事実、つまりオルタナティブ・ファクトであり、次作でスパディが闘う舞台はポスト・トゥルースの世界でもあるということだ。艱難辛苦もここにかかってくる。貴種流離譚、原点回帰このふたつが決まったのは、すべてあの奇手が見事に成功したからだ。
この奇手、実は奇襲攻撃のような思いがけない突然なモノではなく、ファンにとってはミエミエのバレバレの手でもある。つまり、一歩間違えたら物凄く白ける危険性があるし新たなユニバースそのものを揺らぎかねないモノでもある。
だから、この映画は別の視点から云えばMCUとファンがポーカーゲームをしているかのような心理戦でもあるのだ。
その切り札にMCUが出してきたのが俳優のジェイク・ギレンホールだ。そして彼は『FFH』どころか今後のユニバースを左右しかねない大役をそれは見事に演じ、その重責を見事に果たした!当然にジェイクはこの役で今度のオスカーに助演男優賞にノミネートされるだろう。さすがに受賞までは行かないとは思うが。
だが、そうはならなくてもオレが褒め称える!
ジェイク・ギレンホール!ジェイク・ギレンホール!ジェイク・ギレンホール!ジェイク・ギレンホール!ジェイク・ギレンホール!ジェイク・ギレンホール!ジェイク・ギレンホール!ジェイク・ギレンホール!ジェイク・ギレンホール!ジェイク・ギレンホール!ジェイク・ギレンホール!ジェイク・ギレンホール!ジェイク・ギレンホール!ジェイク・ギレンホール!ジェイク・ギレンホール!
以上!
追記:今作の結論に至ったのはglobalheadさんの『アベンジャーズ/エンドゲーム』を読んでひらめきを得たのでリンクを貼っておきます。
自分はMCUは世相を反映させた寓話だと思っていたが、どうやらマーベルは本気でMCUを「現代の神話」に仕立てる気みたいだ。
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