えいざつき ~元映画ブログだったポエマーの戯言~

批評というよりも、それで思い出した事を書きます。そして妄想が暴走してポエムになります。

【ネタバレ無】映画とは何か?『ジェミニマン』

お題「最近見た映画」

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]

 

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www.imdb.com

 

アメリカ国防情報局(DIA)に所属する凄腕のスナイパーであるヘンリーは政府に依頼されたミッションを遂行中、ある事で自分の衰えを感じて引退を決意する。しかし、昔の友人から最後に受けたあのミッションが、ある陰謀の一角らしきのを知った後にDIAの特殊部隊の急襲を受けるが、辛くも逃げ出した。そして潜伏していた南米で若き頃の自分と似ている人物追われる。

アン・リー監督

 

初っ端から私事だが、夕刻に私用を終えた後、最寄りシネコンで、「どうせなら『ジェミニマン』を話題の3Dプラス‐ハイ・フレーム・レート 上映で観たいな」と思って、スケジュールを確認したら、上映が最終回で間が2時間以上もある。それなら2D(吹替)も観てハイ・フレーム・レートと比べてみよう。と思い同じ映画を2回連続で観ることに。

 

映画は静止画の連続で繋いで表示するメディアであり、通常1秒間に24枚表示するフレームレートなのだが、今回の売りであるハイ・フレーム・レートは通常1秒間に120枚で表示する。具体的にどう変わるかといえば、例えば、激しい動きは人間の目だと24枚はブレとして認識するが120枚になるとブレは少なく抑えられて認識される。といった具合になる。ちなみに今回自分が観たのは120枚のフレームレートではなくて60枚のフレームレート。地方都市だとこんなもんだ。

 

まずは2D版(吹替え)から。個人的にアン・リー監督はクセの強さやケレン味の強さで魅せる感じではなく、どちらかと云えば「端正」なイメージで、本音ならば「自分のガラじゃない」タイプ。そんなリー監督、過去に『ハルク』でやらかして -- マンガ版『キカイダー』とか気に入っている自分はそんなにダメだとは思っていないが -- いるので、過度な期待はしなかったので、それなりに楽しんだ。アクションは前半のバイクチェイスポール・グリーングラス風で、クライマックスの銃撃戦はマイケル・マン風に撮っていて、自分としてはクライマックスだけで充分に元は取れた。

 

ドラマは、表向きはクローンを題材にしているが、作中に主人公ヘンリーの上官と息子のエピソードを挿入することで、実は「実の親か?育ての親か?」の葛藤を描いている。ハッキリ言って本質は親と子のメロドラマだ。だから、ヘンリーがジュニアに「そうなって欲しくない」と、こだわるのも分かるし、あのクライマックスの収め方も分かる。もちろん、「自国民の生命を守るために、非人道的兵器を開発してしまう逆説」も入れて合って、-- 人によってはキャリー・フクナガ監督『ビースト・オブ・ノー・ネーション』を思い出すかもしれない -- 上記のアクションとそれらが足し算のように繋がっている感じだ。

 

足し算のように繋がっている感じ。と、書いたが、本当にただ足しているだけで、統一されていない。つまりは、この映画なりの独自性が感じられない。あと、ヒロインの吹替に若干の違和感があった。そんな感想だ。

 

そして、次に3Dプラス‐ハイ・フレーム・レートを観たが……

なんじゃこりゃや!?

 

2Dで観たのと印象がまるで違う!画が変わっただけで、こんなに変わるものかとも思った。観ていない人にこの感じを伝えるのは難しいけど、かなり雑に言ってしまえば、画が、ほぼ全編に渡ってすべてにピントが合ったパンフォーカスの画なのだ。しかも、現実としてパンフォーカスの画にするにはキャメラを固定しなければいけないが、この映画はキャメラが動いている!作中で海中から死体が投げ出されるシーンがあるが、それもパンフォーカスの画なのだ。ちょっと信じられない。60でこれなのだから、120だともっと凄いことになっているのだろう。

 

先に「ほぼ」と書いたが、アップの画だけはバックはボケている。これは意図としてそうしているとしかそうしているとしか思えない、もし、120でこの画を最後までみせられたら脳の処理能力が追い付かなくなって逆に気持ち悪くなってしまうかもしれないための配慮だろう。なんていうか「風俗行ったら人生変わった」ならぬ「ハイ・フレーム・レート観たら映画観変わった」くらいのインパクトを受けた。

 

 確かにCGがチョイとショボいと指摘するのも分かるけど、人間のフレームレートが60だと考えられている段階(所説あり)では、120は明らかに人の処理能力は超えているので、これをフォローするのは具体的にどうすれば良いのか考えられない。

 

何より、日ごろからDVD、Blu-ray、配信なども観ている自分には、心の片隅に置いある「それは物語をみているだけで映画を鑑賞した事になるのか?」の疑問が、また沸々と渦巻いている状態になっている。

 

 なんか、アクション映画で哲学的な気分になった気分だった。そんな締めです。

 

余談:アン・リーの前作に『ビリー・リンの永遠の一日』がある。これはイラク戦争で英雄になった青年の「誰にも理解しがたい心境」をハイ・フレーム・レートで撮ったらしいが、日本では劇場公開もされず、他のメディアのみで観ることができる。『ジェミニマン』のドラマでピンとこなかった人は、観ておくとよいかもしれない。これは『ジェミニマン』でいうと「童貞(ジュニア)がオヤジ(ヘンリー)に変わる間」を描いた映画だからだ。そして個人的には『ジェミニマン』でこの映画の意図がようやく分かった気がした。気がしただけかも知れないが。

 


Gemini Man (2019) - Official Trailer - Paramount Pictures

 

  

Gemini Man

Gemini Man

 

  

 

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