えいざつき ~映画と世情と日常と~

何かの感想というよりも、それで思い出した事を書きます。映画、SFが多めです。そして、たまに妄想が暴走します。

『復活の日』の思い出話

 お題「どうしても言いたい!」

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]

 

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www.imdb.com

 

小松左京SF小説の映画化。198X年、東ドイツの陸軍細菌研究所から新種のウィルスMM-88が盗まれて密輸されている途中で破壊されて四散されてしまう。MM-88とは摂氏マイナス10度で増殖をはじめインフルエンザウィルスに取りつく性質をもっていた。最初は「イタリア風邪」と流行したMM-88は世界中に猛威をふるい、一年も経たずに人類は滅亡した。南極に残る人々を残して……だが、そこで生き残った人々にも、過去の亡霊というべき存在に脅かされることになる。

深作欣二監督

 

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eizatuki.hatenablog.com

 

◆はじめに

昨今の騒ぎで急速に注目を集めているのが、この『復活の日』だ。

 

ところが、この映画公開当時の評価は中並の評価でしかなかった。世界中をロケーション撮影した労は評価されても、そこに描かれていたドラマは泣きに寄りすぎていて、当時のパニック映画の要諦からかけ離れていたからかもしれない。

 

そして、自分も最初に観たのは公開からずっとあとのビデオ、DVDぐらいで映画館では観たことがない者であり、それに、はじめて観たときは映像は良かったけども中身はイマイチ楽しめなかったことを憶えている。何しろ当時はまだ子供でSFといえばスターウォーズスタートレックみたいなカラっとしたイメージを持っていたからかもしれない。

 

しかし、一部の映画ファンからは固定的な支持を得て、今まで語り継がれて記憶に残り現在のこの状況で急速に注目されているのをみると、嫌な言い方になるが、ようやく現実が作品に追い付いてきた。というべきなのかも知れない。

 

そして、個人的にはTaiyaki a.k.a ヒロキさんのブログで久しぶりに海外短縮版を観てあとに、本編も観直しているうちに色々と思い出したこともあって、そこで今回は自分が憶えている所を中心にこの映画について書いてみたいと思います。

 

復活の日

小説『復活の日』は1964に書き下ろしとして発表されたSF小説で、原作者の小松左京が原作を書く際にインスピレーションを得たのは1960当時にロンドンにペストが発生してそのペスト菌は研究から漏れ出したものらしい噂話を元にウィルス兵器がすべての脊椎動物を滅ぼす話を書き始めた。-- ここは自分の妄想だが、おそらく1976年に公開された『カサンドラ・クロス』のアイディアもここからだろう。

 

もっとも、ただのウィルスでは脊椎動物(人類を含む)を滅亡させるまでにはいかない。例えば狂犬病は人がかれば確実に死ぬウィルスだが、その媒介は噛まれることによってしか伝わらない。狂犬病接触感染や空気感染などあり得ないといってもよい。これはすべての媒介者がいなくなればウィルスを保有する生き物がいなくなることでもあり、つまりはそのウィルスも死滅することを意味しているからだ。高い感染率と高い毒性は両立などできない、それはウィルスにとっても割りに合わない戦略なのだ。だから自然変異のウィルスで大部分の生き物が死ぬことはあり得ない。

 

そこで、小松はそこに二つの工夫を凝らした。当時はまだDNAの二重螺旋構造が知られているだけで遺伝子工学などまだ未知に過ぎなかった時期なのに兵器としてのウィルスを工学の視点で描き、さらに、そのMM-88を地球由来ではなく宇宙由来に設定した。宇宙なら地球のルールに従わずに増殖して、大部分の生き物を滅ぼすだろうと考えたからだ。これがメインアイディアであるMM-88の設定だ。-- ちなみに原作では宇宙由来のウィルスのために放射線(宇宙線)を照射すると変異して無毒化するという設定になっていて、核爆発による人類二度目の死も核降下物が通常よりも少ない中性子爆弾が米ソともにすでに置き換わっている状況になっているので、MM-88が死滅してかつ核爆発後も生き残った人類には影響が及ばなかった事になっているが、映画ではそこは省略されている。なので、人類を滅ぼしかねない核兵器が地球を救った。というアイロニカルな味付けはなくなっている。

 

これに1953年に南極観測隊に参加した西堀栄三郎の「南極では雑菌がないので風邪にはかからない」という話をまとめてフィクションとして書き上げたのが『復活の日』だ。

 

これが、日本初の本格的な人類滅亡SFであり、大衆文学では日本で初のパニック小説となった。小松が、あのベストセラー『日本沈没』を1973年に発表する10年前の話である。

 

 角川映画

 『復活の日』の映画化は1974年に角川映画が始動した。1976年公開の角川映画第一作『犬神家の一族』よりも早かったわけだが、「この作品を映画にするために角川書店の社長になった」と発言していた当時の社長である角川春樹は実は小松作品では宇宙と時間を舞台にした『果てしなき流れの果てに』が好きだったらしい。宇宙と時間が題材なだけに春樹好みの壮大なスケールだからだろう。しかし、日本人はそうした壮大さよりも泣きが好きな国民性なので、『復活の日』を選択した。もちろん世界公開を視野に入れてハリウッドのライターに脚本を依頼したが、サスペンスに寄ったモノだったので、日本人にも受けるよう泣きの要素を入れてヒットを確実なものとしようとした。

 

監督は『仁義なき戦い』の深作欣二を起用。深作は1978年公開『宇宙からのメッセージ』のチラシにこの『復活の日』と同じ小松の『こちらニッポン…』の映画化に興味を示していて、その意を汲んでの起用かも知れない。

 

カメラマンは1973年公開の『日本沈没』にカメラマンのひとりとして参加していた木村大作が担当。こうして『復活の日』の映画化が本格的にはじまった。

 

もちろん当時の日本映画としては超大作であり、出演者も日本の有名どころが揃っていたし、海外俳優もジョージ・ケネディグレン・フォードロバート・ヴォーン、ヘンリー・シルバー、オリヴァ・ハッセー等による日本でも名が知られている人々を配し大作感を出していたが、この映画の最大の見所は200日も使って木村が撮ってきた世界中の風景であり、それに南米と南極を含めると劇映画では今だにこれを越える作品はないといっても良く、特に南極に映画撮影用カメラを持ち込んで撮ったはじめのて映画になったと云われている。

 

そして木村はハリウッドで撮られた潜水艦の特撮のクリア過ぎる画に不満を持ち、潜水艦のシーンをスクリーンで映してそれを16ミリカメラで撮って、さらにもう一度スクリーンに映し前に水槽を置いて今度は35ミリカメラで撮るという手間をかけている。画にこだわる木村らしい逸話だ。

 

また、この映画を語る際によく言われるチリ海軍からチャーターした潜水艦はどうみても原子力潜水艦ではないのだが、深作によるとそれもリサーチしており、原子力潜水艦と通常動力潜水艦の違いも理解していたが、南極に潜水艦を入れたら面白い。というスタッフ通しの話し合いから活動屋の血が騒ぎ結局それをやることになったそうだ。もちろん世界初の潜水艦による南極到達となった。

 

個人的には、『復活の日 DTSプレミアムBOX [DVD]』の特典映像として小松が語っていた話が印象深かった。それを紹介すると、『復活の日』を象徴するシーン、草刈正雄演じる主人公が夕日をバックに立つシーンは南米ロケを行ったくだりで、かつて南米へ紀行文を書くために訪れていた小松も懐かしさ交じりにその部分を語っていたが、一か所だけどうしても分からない場所があって首をひねっていた。主人公が海を歩くシーンがそれなのだが、それがどこかは深作等が語ったオーディオコメンタリーだとちゃんと説明されているのだ。

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復活の日』より

これ実は千葉県・御宿町の海岸で撮ったんだそうだ(笑)。『復活の日』は実は海外のふりをして実際は日本の北海道や伊豆でロケ撮影していました。っていうのもあるので、当ててみるのも一興かもしれない。

 

ここまで予算(当時:25憶円)と日数と労力を使った映画だったが、興行の結果としては採算が合わずに結果としては赤字になり、春樹が期待を寄せていた海外への売り込みも不発に終わって、これ以降、角川映画は大作を止めて中規模の制作へとシフトしていったのは映画ファンなら誰もが知っているところだ。

 

◆終わりに 

久しぶりに観直して、新たに思ったのは意外にも古びた感じがしなかったところだ。通常SF映画といえばガジェットの存在が重きを置いているが、『復活の日』が重きをおいているのは世界中の風景なので、それが時間に耐え抜いた。とみるほかはない。そして、それが実現できたのは当時の日本映画人のバイタリティがあってのことだろう。そして、評価とは別にそれを観た人々の記憶に残った。この映画は愛されているのだ。

 

そうゆう意味では今でもファンの間に愛されて語られるこの『復活の日』は原作のバイタリティと映画人のバイタリティが偶然にも一致した、しあわせな作品だともいえるかも知れない。

 

最後に今回影響を受けたTaiyaki a.k.a ヒロキさんのブログを貼っておきます。

taiyaki.hatenadiary.com

 

参考

小松左京『SF魂』新潮社〈新潮新書

キネマ旬報 1980年6月下旬号 NO.788

復活の日 DTSプレミアムBOX [DVD]

復活の日 - Wikipedia  

 


復活の日

 

 

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いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命

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