えいざつき ~元映画ブログだったポエマーの戯言~

批評というよりも、それで思い出した事を書きます。そして妄想が暴走してポエムになります。

日本沈没2020

お題「気になる番組」

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。

 

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www.imdb.com

  

はじめに今回はネットフリックスで放送された『日本沈没2020』について語っています。基本はTwitter等ネットで流布されている部分についてのみ語っていますので、本作品を観ていない方には意味不明な内容になっていることを最初にお断りします。

  

ネットフリックスで配信中のオリジナルアニメシリーズ『日本沈没2020』が紛糾している。賛否両論だ。

 

原作者、小松左京がここでやろうとしたのは、「日本人が国土を失い流浪の民になる」という設定で、それを戦争や紛争にしない自然災害という設定で、小説『日本沈没』を書き上げた。それを、このアニメ『2020』は家族というミニマムな物語とドラマとして直したのであるが、その部分がクスリでもやっているのか?と考えるくらいぶっ飛んでいると一部では思われているからだ。

 

でもまあ、いち小松左京ファンからみれば、第1話から原作のあの部分を映像化したらしいのは何となく察した。

 

 「赤子を生むんじゃ。おまえの体なら、大きい、丈夫な赤子が生める……。いい男を……日本人でなくともいい……。いい男を見つけて……たくさん生め……」

 日本沈没より

  

この部分が何を意味しているのかといえば、ナショナリズムのない日本人だ。

 

ナショナリズム国家主義民族主義とも説明されるが、ものすごく簡単に説明してしまうと「政治的な共同体」であり、歴史的視点からいえば「貴族などの旧支配者層が撤廃され誰もが平等とされた時、その属する共同体への帰属する対象」である。-- その際に権力と役割(階層)が生まれるがそれは不随するもので本質ではない。

 

これが明確に分かるのが、第4話のコミューンでの例のカレーだ。そこでこのコミューンが、どこの政体の干渉も受けない意味での反ナショナリズムの団体であるのが示されるし、そこである一人の若者が自らを取り戻す様を描くことでナショナリズムでは人は復活しないのだ」という事を反語で描いてゆく。

 

さらに途中で加わった男の大道芸がコミューンに残るが、彼はユーゴスラビアから来た。つまり民族ナショナリズムによる紛争で傷ついている。そんな彼が残るということは、そのコミューンに居心地の良さを感じたからだ。それはおそらく各国を転々としていた彼にとって、はじめてナショナリズムを感じなかった場所だから。つまり反ナショナリズムだ。

 

第7話でこれが、さらに協調される。ある人物が「国を取るか家族を取るか」の選択に迫られるが最終的には家族を取る。ナショナリズムに対する異議申し立てだ。

 

さらにご丁寧に、この後すぐに国粋主義達のメガフロート乗ろうとしたら登場人物に純日本人以外がいたので乗船を拒否される。ここまできたら明白だ。

 

第9話になるとハーフ、引きこもり、半身不随、そしてユーチューバー -- 実際には語ってはいないが行動で語っているので同じ -- が自分の国日本について語りだす。ナショナリズムからみれば真っ先に排斥される人物たちがだ。

 

どうみても反ナショナリズムだろうこれは!

 

そんな反ナショナリズムが、これからの日本のために、ある行動をするわけだが、そこから導き出せるのはナショナリズムのない日本国民の姿を描こうとしていることにほかならない。

 

前振りとして、電子政府・国家としての側面があるエストニアの事をちらつかせながら、ラストの締めは世界各国でその国人として生き、かつ日本人としても生きる主要人物達の姿を描いているのだ。つまりナショナリズムのない新しい日本人だ。

 

しかし、大勢の人々がひとつにまとまるためにはナショナリズムが必要なのは歴史的必然なので、それが無い国家国民なんてリアリティが無い。という疑問を誰もが持つだろうが、実はこの新しい日本人像は原作者小松左京も『日本沈没 第二部』で提唱している。ザックリと説明してしまえば、祖国を失い世界中に四散した日本人はナショナリズムよりも世界市民コスモポリタンとして生きて往くべきだと説いている。つまり、アニメは結果として原作者の意を汲んでいるのだ。

 

これはSF作家、小松左京ならでの観点、というよりも「希望」みたいなものだ。

 

正直、このアニメは第2話からリアリティがいきなりおかしくなって物語が進むたびに行き当たりばったりのご都合主義(どんだけ持っているんだユーチューバー!)の展開になってゆき、出来上がりがよろしくないのは分かるし、自分もそう思っている。しかしながら、否の方はともかく賛の方は原作を読まないで、この珍妙さを取り上げて騒いでいる状況に小松ファンの自分としてはイラっとしたので、この文章を書いただけなのだ。

 

 

日本沈没 決定版【文春e-Books】

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日本沈没 第二部

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