ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
今日のポエム
現代版魔界転生。
映画とはポエムです!ポエムとは映画でもあります。それでは大いにポエムちゃいましょう!
今回は ……
『劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel]Ⅲ.spring song』
そして、キーワードは。
蘇える伝奇!
今作は三部作であり、2017年に公開された『Ⅰ』、2018年の『Ⅱ』からの最終章、つまり『Ⅲ』にあたるものであり、そして原作はもともと18気禁のゲームで、『Fate』シリーズの初期であるゲーム『Fate/stay night』のヒロインの一人に焦点を当てたルートの映画化らしい。
らしい。というのは自分はこのゲームをやったことはなく、せいぜいテレビアニメ『Fate/stay night』、『Fate/Zero』、『Fate/Grand Order 』くらいしか観ていないからだ。
その程度で充分じゃないのか?とか思ってはいけない。あの世界は底なし沼だ。この程度はまだ沼に足先をつけた程度にすぎない!
そして、このアニメ映画を観れる資格のある条件はたったひとつ……
このポスターで違和感・嫌悪感を抱かなかった者だけ!
つまり、このキャラクターデザインでチョーっとでも違和感・嫌悪感をもってしまった人は近づかない方が吉だ。1980年代以降、大友克洋からはじまり浦沢義雄、宮崎駿等に多大な影響を与えたフランスのコミック作家ジャン・ジロー(メビウス)の匂いがどこかにあるはずなのだが、このキャラクターデザインをした武内崇には、それがまったく無い!ようするに自分がかつて言った大友克洋以前のカクカクカッコイイ!デザインで貫かれている。
そして、さらに付け加えるなら、今作は物語を知ったり、ドラマを読み取る必要も無い。ただ……
こんなキャラやあんなキャラが画面狭しと動いているだけなのだから!
「いや、それでも『Ⅲ』なんだし、いきなり観ても訳が分かんないだろうと」心配する向きもあるだろうが、それは心配無用だ。
内容はわかんないよー!
これに尽きる。たとえ『Ⅰ』と『Ⅱ』を観たとしても、そして、前述したテレビアニメを観ても、全体像を把握する事は困難だ。そして、それに突っ込む標準的な視点、いわゆるまっとうな者がいない。つまりここではみんなどうかしている。
なので、聖杯戦争とやらの独自ルール、縛り、そこからの葛藤はあるらしいのだが結局は何が何やらだからだ。分かっているのは「好きな少女の為に少年が戦う」。それだけだ。
一応、とってつけたかの様に、物語の中心にある聖杯が、「あらゆる願いを叶える」装置であり、どうゆう物でどんな事をするのかは説明されてはいるのだけれども、それに全くリアリティも説得力も無いので、誰も納得もできない。いわば、中心となる聖杯とはスポーツ競技におけるマラソンのゴールくらいしか役割はなく、そして、あえて言えば「空」。
その「空」のために、それぞれが時には味方になったり、また敵となって戦う!というお膳立てのだけの設定だと思ってもいい。
それでは今作と『Fate』シリーズの魅力はなにかといえば、それは山田風太郎の『魔界転生』を現代的にリフレッシュして蘇らせたことだ。
『魔界転生』は2度も映画化されているので野暮なのだが、簡単に説明すると由井正雪が怪老人と組んで徳川幕府を転覆するために宮本武蔵などの有名な兵法者・剣豪を再び蘇らせてその企てを起こそうとするが、それに立ち向かうのが柳生十兵衛達グループである。つまり、時代がずれている過去の剣豪どおしを戦わせる趣向になっている。
そして、この『Fate』シリーズも実在だけではなく過去にあった神話・伝承・しいては架空の英雄たちを聖杯戦争で召喚して戦わせる趣向になっているので、これは『魔界転生』のアップデートといっても良いのだ。
つまり、今作と『Fate』シリーズは現代の伝奇ロマンというべきものなのだ。
そして『Fate』とその派生作品とは高度経済成長から消え始めていた伝奇ロマンを大衆文化として今に復権させた訳だ。
それでは、「お前は、今作をどう観たのか?」といえば、冒頭からのバトル!バトル!バトル!の連続でワクワクしたのだけれども、クライマックスあたりからウエットになりだして急速に冷めてしまったのが本心だ。
アイツが眼を開いたのが自分にとってのクライマックスだった。
しかし、くどいが、このキャラに違和感・嫌悪感を感じない人にとってこの『Ⅲ』こそが、膨大な『Fate』シリーズの入門編に相応しいのはニワカの自分は確信している。
もしもこれがダメならスマン!
劇場で鑑賞。
『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅲ.spring song』PV│2020年8月15日公開