ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
今日のポエム
いつか、いつか、交わろう。
映画とはポエムです!ポエムとは映画でもあります。それでは大いにポエムちゃいましょう!
そして今回のキーワードは
ドラマはあるけどチックは無い!
今回はネタバレスレスレです。
いきなり私事だが、自分と本作を撮った青山真治監督との相性は良くない。
具体的にはほとんどの作品で寝落ちしている。
しかし、ほとんど、なので、もちろん寝落ちしていない作品もある。そして本作もそれに入る。だから今回は感想を語ってみることにした。
実は本作はいわゆる企画モノで、作詞家・小竹正人の同名小説と、原作とともに誕生した「三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE」の歌曲『空に住む Living in your sky』を基にしたイメージを映像化したもので、古めかしい言い方をすれば歌謡映画だ。
歌謡映画とは1950年代から1960年代に作られたヒット曲、話題曲をモチーフにした物語とドラマで構成された作品群を指す。
とは、言っても自分も知っているのは、映画館で観たのはタレント・風見しんごのヒット曲『泣き虫チャチャ』(1987) と、後はいくつかを有料放送と配信を流し見で観た程度だ。だからこの辺りをまとめて語る知識はない。
と、そんな自分を棚に上げて、本作について語れば、その物語とドラマはシンプルだ。
子供の頃に両親に構ってもらえなかったばかりに、他人との付き合い方が分からないためゆえに愛に迷い孤独を抱えているひとりの女性が、タワーマンションに住むことをきかっけにそこで天使と出会って恋心を抱き、それから他人との付き合い方に向き合い変わってゆく姿を描いている。
もちろん、本作でいう天使とは登場人物の時戸森則を指す。
どうして天使なのかといえば、そのキャラクター造形に人間臭さを一切排除しているからだ。ようするに他の登場人物は感情移入できるようになっているし、共感 -- それが反発でも同じ事 -- できるところもあるが、時戸森則のキャラはそれを拒絶しているからだ。よって彼は天上人、つまり天使だ。
そんな本作の重要な要であり、リアルの揺らぎがある。浮世離れした難しいキャラクターに対してあえて演技を放棄させて、というよりも、その配役となった岩田剛典そのものの魅力で強引に突破している。
そして天使に恋した主人公は、成長というよりも、少しだけ変化して、避けていたモノから目を背けない感情になる流れだ。-- ヒント:二つの平行線がいつか交わるという、非ユークリッド幾何学の視点を永瀬正敏に語らせて、ラストの位牌と遺骨のズームアップと主人公の視線の先を見せることで、いつか交わることを暗に示す。
そんな映画だったの?と観た人なら思うだろうが、前にもいったとおり、原作はあるものの、本作は歌謡映画だ。だから、主題歌『空に住む Living in your sky』を聞けば、そうゆうイメージで映像化しているのは容易に察することができる。
空に住む〜Living in your sky 〜(歌詞) : 三代目J SOUL BROTHERS
なので、そのイメージを描いたのが本作だ。
しかし、やっかいなのは本作の監督がドラマ(脚本)の段取りよりも画(視線)の言語を信じている青山真治なので、抑えるところは抑えるが、いわゆる感動を押し付けるようなベタな演出はせずに観客にゆだねる形にしている。
ぶっちゃけ内容は、セリフとかの説明は一切無しで、タワーマンションから看板を見下ろす主人公の視線で感傷的な感情を描写して、ラストに見上げる視線を入れることで、主人公が変化した感じるを表現しているだけなのだから。これまた実にシンプルだ。
シンプルなのだが、ドラマの段取りによる感動が染み付いている人々には本作は足が地に着かない妙にふんわりとした終わりに感じるだろう。
それでも20代後半以上なら、それなりに楽しめる作品にはなってはいる。
自分はダメだったがな!
劇場で鑑賞。