ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
今日のポエム
それは男の子の世界。
映画とはポエムです!ポエムとは映画でもあります。それでは大いにポエムちゃいましょう!
そして今回のキーワードは
〇〇劇!
今回はネタバレスレスレの紹介モード。
個人的な話だが、ここ数日間はショーン・コネリー主演作を何作か観直した。その中から、あまり語られていない彼の作品について不定期に語ってみたいと思う。
本作は1904年に実在した人物と実際に起こった事件を基にしたフィクションだ。
物語は1904年、モロッコの港町で過ごしていたアメリカ人である邸の女主人イーデンと息子、娘の2人が突如乱入してきた預言者ムハンマドの血を引く砂漠の王者を自認するライズリー率いる賊徒 -- 本作では海賊 -- に攫われてしまう。その目的はモロッコへ介入している列強の現実に反発して、誘拐で国際紛争を誘発させ、甥であるモロッコの太守に外国勢力排撃の号令を出させようと目論んでいたのだが、それを当時のアメリカ第26代大統領セオドア・ルーズベルトが対処したために思いもかけない方向へと転がってゆく話だ。監督は『ビッグ・ウエンズデー』(1978)のジョン・ミリアス。
ジョン・ミリアスといえば高校時代はサーフィンばかりしていたのにひょんなことから黒澤映画を観て「サーフィンやってる場合じゃねぇ!(超脚色)」とばかりに映画学校に入学して脚本家としてキャリアを積んで監督となって後に、共産主義国軍がアメリカを占領してしまう『若き勇者たち』(1984)で、反共のタカ派男として烙印を押されハリウッドから干された人物であり、そして憧れの黒澤に「おれは山本五十六の生まれ変わりだ」と言っちゃたりする人物で、ある意味で物凄く初心(うぶ)な人物だ。そしてそんな人が撮ったのが本作だ。
だから実話を基にしてはいるが、調べてみると本物のライズリーは演じていたショーン・コネリーのキャラクターとは性格・風貌がまったく違う。それは予想どおりだけども、女主人イーデンは演じていたキャンディス・バーゲン(当時29歳)も実際の年齢も、まったく違う64歳だ。似ているのはルーズベルトを演じたブライアン・キースくらいだ。(画像はIMDb)
だけども、その設定&配役で監督のジョン・ミリアスが何をやろうとしたのかかは明白だ。
西部劇と時代劇がやりたかった。
これだ、もちろん西部劇とはアメリカ開拓時代を舞台にしたコスチュームプレイであり、時代劇は日本の侍が活躍した時代のコスチュームプレイだ。つまり近代アラブを舞台にしたら、銃(ガンマン)と刀(サムライ)の両方が違和感がなくやれる。
もうこれにつきる。いや、
融合というよりも自分が好きな人物等をひとつにしたかった!
だろう。
だから本作でのコネリーが演じるライズリーは主にジョン・ウェインと三船敏郎の融合物だ。バーゲン演じるイーデンとの掛け合いはウェインの西部劇を観たことがある人なら、無骨な男と気の強い女で起こるお約束な男女の風景だし、一見いかつい風体の男に見えるが、意外と間が抜けでお茶目なところなどは三船&黒澤時代劇ではお馴染みでもある。
さらにライズリーを見つめるイーデン夫人の息子との関係が、どう考えてもスティーヴーソンの名作小説『宝島』のジョン・シルバーとジム・ホーキンズとの関係をも思い起こすところがある。
そして最大の好敵手(ライバル)が、合衆国大統領で、そいつと男同士の意地の張り合いが物語の中心になっているので、これは男、というよりも男の子が盛り上がるシュチエーションでもある。
つまり本作は、ミリアスが「自分が好きだった男キャラクターを全部ぶっ込んだ」ドラマなのだ。というよりもミリアスの男の子願望を、ただ流ししているだけ!
だから歴史ドラマというよりも、まるで少年マンガの世界の雰囲気を映像化したモノだと断言できる。
でも、久しぶりに観直したらその割に何か野暮ったい。はじめて観たときは、結構ワクワクしていた思い出があったので、この違和感に正直戸惑った。元のフォードやホークス、クロサワの方が出来が良いのだ。どうやらキャラが強烈だったのとスコアを書いたジェリー・ゴールドスミスのインパクトで、いわゆる想い出補正が働いて記憶していたらしい。凡作まではないものの名作というほどの作品でもないのだ。
あの時は自分も子供だったし、やはり少年マンガのノリで楽しんでいたと考えるしかない……。
でもいいや!コネリーもキースも超カッコ良かった、カッコ良ければすべてよし‼
DVDで鑑賞。
参考:黒澤 明 (著)、聞き手原田 真人、「黒澤明語る」
The Wind and the Lion (Original Theatrical Trailer)