ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
今日のポエム
うーん……
映画とはポエムです!ポエムとは映画でもあります。それでは大いにポエムちゃいましょう!
そして今回のキーワードは。
コメディよおん!?
勝手にショーン・コネリーシリーズは今回で終わり。その第五弾が本作だ。
先に感想を言ってしまうと、痛快作なはずなのに、どうも痛快さを感じられないもどかしさがあるというか。いや、「面白い、つまらない」の二者択一でいえば、「面白い!」ですよ。だけど、チョットそこまで突き抜けていない感がどうしても……。
物語は実際にあった犯罪を基にして、舞台は1885年ビクトリア朝。ロシアの南下政策からはじまったクリミア戦争のため戦費を運ぶ列車から四つの鍵で厳重に守られた金庫の中にある金塊(当時の戦費は紙幣ではなく金塊だった)を奪うためにショーン・コネリー演じる謎の男ピアースとドナルド・サザーランド演じる相棒のエイガー、レスリー・アン・ダウン演じるミリアム三人がそれを奪い取ろうとする流れだ。-- 実話を基にしているが、実際は映画のように鍵は四つではなく二つだった。
そして本作を撮ったのは今では映画監督というよりも作家として名が知られているマイケル・クライトン。特徴としては主に自作を中心にスリラーに撮ってきたが、そのスリラーも正攻法ではなく最先端技術や科学的知見を基に批判的に描いた独自独特なものであって、本流から外れているところがある。もちろん『ジュラシックパーク』の話は今さらだろう。
そんな映画監督マイケル・クライトンは1973年『ウエストワールド』で、映画史というよりも娯楽ではひとつのマイルストーンを築いている。作家としての大ヒット作『アンドロメダ病原体』から主張していた「完璧なシステムなど存在しない」という考えをさらに展開させて、人が抱く虞であるフランケンシュタイン・コンプレックスという概念に、より具体性を与えた。つまり、「人を襲う機械」であり、「人類を支配するAI」だ。そのフォーマットは今でも様々な娯楽に影響を与えている。(画像はIMDb)
そんなクライトンが本領の最先端技術・科学的知見から外れて映画史の本流である強盗モノを題材したのが本作だ。そして、クライトン作の中でも異質な作品でもある。
それを簡単にいえば、本作は批判的で暗い感じがするクライトンにしてはユーモアが多い。もちろんそれは意図として入れている。ビクトリア朝を舞台にした強盗モノであるので大胆さと楽しさを強調するためだ。四つの鍵を手に入れる描写はシリアスというよりも飄々としたコメディ風になっているし、それを手に入れるために出演者のレスリー・アン・ダウンやドナルド・サザーランドは観客から見ても楽しい扮装で表れるからだ。本作の見所の一つでもある。この雰囲気が最後まで続けば本作はもう少し語られ続ける作品になったかもしれない。
ところが、中盤で主役のコネリーが殺人を犯すシーンが入ってしまい、前半で魅せていた楽しさが減じてしまう雰囲気になる。もちろんここから後はシリアスな展開なら、感情はともかくも、それはそれで合点がいくのだが、ところがクライマックスからラストシーンからが、また明るい締めになっていて、どうもアンバランスで困る。
それにクライトン気が付いてもどうしようもできなかったのわからないが、意識してやったのであろうコメディな部分と本来のクライトンに資質としてある真面目で暗いスリラー部分が無理にくっついている感がアリアリと表れているのだ。
だから、個人的な感情の置き場に困る。
そのアンバランスさをフォローできるとすれば、人物の性格描写なのだが、クライトン作品について付きまとう批判「最先端技術の描写は巧いが人物描写が巧くない」が本作でも如実に表れている。具体的にはコネリー演じるピアースの性格が良く解らない。裕福層と貧困層の両方に顔が利き、頭脳明晰で女たらしのセクシーさを持ち、計画実行のための大胆さをも兼ね備えている設定なのだが、そんなピアースのより具体的な性格描写がないために、あそこだけが唐突で異様な雰囲気であり、その違和感を引きづっているのだ。(画像はIMDb)
おそらくはクライトンのこだわりである、ファンタジーとしての強盗モノではなく、ビクトリア朝における時代のリアリティを念頭に置いた上での強盗計画のためにそうゆう展開にしたのだろうが、何とかならんかったのかったアレ!
それがあれば抜けの良いスカッと痛快な作品になれたものの……せっかくコネリーがトムやジャッキーばりにスタントを使わないで危険なアクションをしているのに……。
DVDで鑑賞。
The Great Train Robbery (1978) ORIGINAL TRAILER [HD 1080p]