ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
景部市高等学校に転入してきたシオンは、登校初日、クラスで孤立しているサトミに「私がしあわせにしてあげる!」と話しかけ、ミュージカルさながらに歌い出す。勉強も運動も得意で底抜けの明るさを持つシオンはクラスの人気者になるが、予測不能な行動で周囲を大騒動に巻き込んでしまう。一途にサトミのしあわせを願うシオンの歌声は、孤独だったサトミに変化をもたらし、いつしかクラスメイトたちの心も動かしていく。
映画.comより引用
映画とはポエムです!ポエムとは映画でもあります。それでは大いにポエムちゃいましょう!
今日のポエム
現代の妖精
今回はネタバレスレスレ解説褒めモード。
今年のダークホースだったね。
ただ、アニメ作品にありがちなキャラメイクありきの作品なので、このデザインに違和感&拒否感を感じるなら観ない方が良い。
しかも、SFで装飾されてはいるがドラマそのものは「アオハルかよ!」とツッコミを入れたくなるほどアオハル (青春とヒロイン) なので、シオンはドラマを駆動させるための役割しか持ってはいない。
でも、本作がユニークなのは、過去のSF、ホラー、スリラーの設定と定石を使っている所。
これをAIとアオハル用に変換しているのでユニークな魅力を持った作品となっている。
あと、お気に入りを話せば、本作は自分が考えているAIが描かれているところ。
AIを描く。とかいうと自我を持つとか人類を支配するとかの展開になりがちだけとも本作では終始「賢いポンコツ」で描かれるから。
「賢いポンコツ」って矛盾しているけども、超簡単に言ってしまうと「愚かさが無い」ってこと。
AIの「愚かさが無い」ってとは何かと言えば、AIは問題解決のために常に最善を尽くすのが仕様で、相手方も当然にそれを求めていると判断し思考して実利としての回答を出す。
ところが、相手方こと人が必ずしもソレを求めるとは限らない。人は自身の感情を満足させる選択と行動を優先する生き物だからだ。それは実利とは限らない。これは心理学でいくらでも実例がある。
そのあたりは将棋AIを描いた『AWAKE』(2020) で例えると、プロ棋士が絶対に指さない手をあえてすることで棋士がAIに勝つ展開になっている。観た人ならピンとくるはず。
つまり人は、あえて愚かな選択をするって事。そして本作のアオハルな展開はそんな事。
だけともAIにとっては、そんな感情は計算外なので、本作だと、このAIは過去のデータから最善手である、あるアニメキャラクターの「歌」で、その人物が幸せになるように思考して選択して行動する。観た者なら、これも直感で分かる。
つまり本作はAIの原理を正しく使ってドラマが展開しているってこと。
後半は謎解きのターンになるけども、それはAIの原理を物語ベースで解説している訳。
でもまぁ、そんな裏側を知らなくても本作は楽しめる。AIを題材にすると前に上げた『ヴィラス』とか『ショッカー』みたいなスリラーが多くなりがちだけども、それらは目に見えない悪魔や悪霊が今やチープになってしまったので、その代用としてAIが取り上げられるのに対してココでのAIは人と人を結びつける妖精としての代用になっているから。
そうゆう視点で語れば本作は現代の妖精を描いた作品だと思っても良いかも。
妖精は邪気が無いから。
劇場で鑑賞。