ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
家でも学校でも居場所のない高校生エヴァン・ハンセン(ベン・プラット)は、ある日自分宛てに書いた手紙を同級生のコナーに持ち去られる。その後コナーは自殺し、手紙を見つけた彼の両親は、文面から息子とエヴァンが友人だったと勘違いする。彼の家族をこれ以上悲しませたくない一心で、思わずエヴァンはコナーと親友だったとうそをつく。彼らに聞かれるままに語ったありもしないコナーとの思い出は、人々を感動させSNSを通じて世界中に広がっていく。
シネマトゥデイより引用
映画とはポエムです!ポエムとは映画でもあります。それでは大いにポエムちゃいましょう!
今日のポエム
希望はそこにある
今回はネタバレスレスレのチョイ誉め解説モード。
注意:今回は核心的な話は避けていますが、本作をより楽しみたい方には読まないことをお勧めします。
今年のダークホース二回目。
これが感想かな。期待はしなかった分、拾い物的な面白さだったよ。
ミュージカルといえば、何かゴージャスなイメージがあるけど、本作はミニマリズムな作りになっていて、それがドラマと良く馴染んでいた。そして新鮮に感じた。
弱点があるとしたら上映時間が2時間17分もあるくらいだけども、昨今の他の上映時間に比べるとまだましな方。
納め方も本作を撮ったスティーブン・チョボウスキーの過去作『ウォールフラワー』(2012)や『ワンダー 君は太陽』(2017) を知っているとドラマチックな締め方はしないだろうと思っていたし、題材に対しては誠実であろうとするやり方も変わってはいなかった。ここでいうドラマチックな締め方とは、やりようによっては宗教的、あるいはスピリチュアル的またはスペクタクル的な展開が一番に感動的なやり方だが、それをしなかったこと。意地悪な見方をすれば刺激&面白味が足りないわけだけども……
まぁ、それがミニマリズムなんだけども。
本作は制作のぺンジ・パセックが高校生時代に起こった事件を基にしたミュージカル作品の映画化で、主人公を舞台でも演じたベン・ブラッドが本作でも主人公を演じたために本国アメリカでは「高校生にしては老けすぎる」という批判もあったらしいけども、自分としては気にもならなかった。
ドラマも物凄くシンプルで、絶望とどう向き合う?かが描かれる。
孤独ではなくて絶望。
ここでいう絶望とは、「希望や期待がまったくない状態」の事。
読み解かなくても、後半に出てくるある小説が「絶望をユーモアでくるんだ作品」だし、エンドロールの後に出てくるテロップも明らかにソレなのだから。
だから、冒頭で主人公が歌っているのは、自分に「絶望した!絶望した!絶望した!」と言っているだけなのだから。
物語のきっかけを作った彼もおそらくは絶望している。
そんな主人公がふとついてしまった嘘から、様々な人々から様々な絶望があるのだという事が紡ぎだされる。本作の前半はそんなドラマ。
絶望があるのだから、当然のごとく希望を求めようとするのは道理。主人公の嘘から様々な、慰撫という「嘘の希望」が群がってゆくのが前半の見せ場なら、後半は嘘がばれた事で、彼がある人物の告白から「本当の希望」を知る流れになっている。
「本当の希望」とは前に歩いてゆく力。自身だけではなく他者とも向き合う。そうすれば、本当の自分も見えてくる。
それが後半のメッセージ。
だから後半の展開は自分にはしごく納得が言った。この辺りはリアルにあったらそうなりそうな展開と映画的(ドラマ的) な展開とのギリギリのライン。
感情が、海が荒れ狂う。ではなくて、小さなさざ波が起きている。というべきか。
それを狙って、上手く納めている。
それよりも批判というよりも疑念があるのは、確かにまともにドラマにするにはあまりにもシリアス過ぎて昏い展開になりがちなのをミュージカルにした事で敷居が低く観やすくなっているのがいいるのは良しとして、ドラマを動かすためとはいえ主人公を不安障害の設定にしたのは抵抗があったかな。(画像はIMDb)
後は、そんなに不満はなしです。
劇場で鑑賞。