ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
ストーリー
関西に平平平平と名乗るスリの名人とスリを最も憎む刑事、船越富蔵がいた。二人は戦友だった。平平のスリ集団の組織は巧妙で、容易に逮捕できない。平平の心配は息子の平一郎が暴力団と関係があるらしいことと後妻の紙江が若く美しいことだった。船越の悩みは一人娘の昭子が適齢期を迎えているのに、何か暗い陰のあることだった。戦友達の集りの宴で、船越は平平に昭子が秘密にしている書類をスリ取ってくれと頼んだ。スタッフ
監督 福田純
脚本・原作 藤本義一
製作 寺本忠弘
撮影 逢沢譲
美術 育野重一
音楽 佐藤勝
録音 瀬戸厳
照明 下村一夫
編集 大橋富美子1969年製作/95分/日本
映画.comより引用
今回はネタバレスレスレの解説紹介モード
先頃、生誕100年と銘打って『恐るべき火遊び』『吼えろ脱獄囚』『波濤一万里』『血とダイヤモンド』、そしてコノ作品を含めてDVD5作品が販売された。ので 、今回はその中から監督らしくね~!なヤツを。
福田純とは映画会社東宝に所属していた、予算とスケジュールを守り癖の無い娯楽作を撮りつづけた、まさしく職業監督と呼ぶに相応しいキャリアを持っている。だから映画ファンからはメディアが販売されるほどの認知度はもっている。
もっている、なのだけども、監督作品として語るべき存在なのかと問われたら微妙なトコロで、邦画史の視点なら必要にはなるが、映画芸術ならそれほど重要でもないのが現実。
それを別の何かのキャラに例えると……
ドカベン なら微笑三太郎!
チェンソーマン なら東山コべミ!
まぁ、そんなポジション。
ちなみに、自分も福田作品で観ているのは『100発100中』(1965)と東宝特撮作品くらいですけど💦
だから、今回は前述した5作品からコレについて語ってみようと考えてチョイスしたのは福田監督のコノ作品の同じ時期公開年1969年がこないな事になっていたからだ。
フレッシュ若大将
ニュージーランドの若大将
何、この大渋滞。
その中でテレビもやっていて、その翌年に『野獣都市』も撮っているんだ。
何という早撮り。
深作欣二よりもスゲー!
その大渋滞なスケジュールでの肝心な物語は大阪を舞台に、昔は戦友だったが今では小林桂樹演じる刑事と三木のり平演じるスリ集団を率いる頭目と捕らえる者逃げる者の鍔迫り合いで、すべてを失って、ほろ苦い虚無感で終る。
もう少し、説明をするなら。刑事もスリの頭目も子持ちなのだが、自分の子供とどう接してよいのかが、わからない。母親はすでに死別しているのでソレらを支える者は存在がなくて月日が経ち。普段は父親としての役割を演じているが、内心では我が子の事が不安でならない。
そして、ある事をきっかけに刑事とスリの頭目は、まさしく生きがいの全てを失う。ユーモラスに描かれているがドラマはシビア。
これに近いドラマは小津安二郎の『東京暮色』(1957)
『東京暮色』は、やはり母親を先に亡くした男主人公の二人の姉妹が、絆を求めようと足掻くが、結局そんなモノはなく、姉は諦め妹は絶望して自殺してしまうというやり切れない物語だが、そんな有様を男主人公は為す術もなく側で眺めているだけ。という薄ら寒い展開だが、その男主人公の心底にあるのは、娘等とどう接して良いのかが分からないからだ。
つまりは、キャラメイクとしては、コノ作品の刑事とスリの頭目と同じ。
その背景には、当然のごとく戦争がある。子供が育ち盛りの時期に戦争で一緒にいてやれず。さらに付け加えると先立たれた母親も戦争の影響で亡くなっている可能性は大きい。
関東と関西の違いはあれど当時の親としてのひとつ姿がそこには映し出されている。
そうした顛末を、コノ作品は時にはユーモラスに最後にはペーソスで収めている。
そんなドラマのキモさえ押さえておけば早撮りもできるって事なのだろう。
まぁ、そこまで難しく考えなくても、ボケッと観ているだけでコノ作品は楽しめる。実際にロケした当時の関西の風俗を観ているだけでいい。
あと、イケメンすぎる平田昭彦とか、若い頃の寺田農とか、あまりにも若くて大滝に見えない大滝秀治だけでも充分!
DVDで鑑賞