ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
今回はネタバレなしの解説モード。
映画の引用。今回は昨年劇場公開された是枝裕和監督、ソン・ガンホが主演、カン・ドンウォンとペ・ドゥナ共演で話題になったコノ作品。
はじめての印象は、普通に名匠の作品だな。
何か、オトしているのか、ホメめているのかが分からないかもだが、褒めています。
でもまぁ、ドヌーヴ主演で撮った『真実』(2019)と同じで巧さは堪能できるけども、アノとコノ作品も、やはり鋭さは減っている気がするの。
だけどそれで確信した事があるので今回は、その巧みさは何なのかについて語ってみたいと思う。というか、鋭さを抜いていないと語りにくいところがあるので。
その語りとは……
早い話が、成瀬だった。
成瀬とはもちろん、日本映画を代表する世界的な監督である、溝口、小津、黒澤に連なる名監督の成瀬巳喜男だ。男女の色恋を切なく描く作品群で高い評価を受けている人物である。
そんな、成瀬作品のスタイルが完成された有名タイトルくらいを観ているかどうかさえも怪しい自分が言うのも何だが、そこは一切無視!(← ハイお約束)
さて、それでゆくなら成瀬作品の特徴・スタイルはズバリ「視線」。
自分がかつてブログに書いた視線誘導の話。
なのだけども、成瀬作品の場合。そんなに単純なモノではなく、小津安二郎作品群と同じ様に、一冊の研究本が書けるくらいなので、今回はそこまで深くは立ち入らない。というか、自分の技量では(ヾノ・∀・`)ムリムリ。
なので、あくまでも興味本位のあたりでとどまることにする。
さて本題に入ると、是枝作品と成瀬作品については、是枝本人が「成瀬作品が好きで影響を受けている」と公言しているので、映画ファンなら是枝作品の大きな特徴である、「同じ何かを一緒に見ることで絆が生まれる」イメージは成瀬からなのは想像がつくし、それとは別にして影響を受けているぽいのもある。
成瀬っぽいでしょ。な、な、な!
でも、それまでは、あくまでもソレっぽいなだけで、そのものズバリはまだ無かったけれども、ところがコノ作品では最初の方から現れる。
成瀬じゃん。
もうこれで終わってもよいけども、もう少し続けると、今回は成瀬、成瀬とか言ったけども、実は締めは小津なのよ。
小津っていったら、もちろんアノ小津安二郎です。
是枝作品は「同じ何かを一緒に見ると絆が生まれる」のは先に書いたけども、後半の観覧バスのシーンでカン・ドンウン等が同じ光景(雰囲気)を見ているのに対して、それとは別の何か(別の雰囲気)を見ているのがソン・ガンホ。
つまりは彼だけが、このイメージからはじき出されている。そして最後には独りぼっちになるのだけども、それが小津作品における笠智衆とほぼ同じ。
小津作品の笠智衆って、誰かに去られて孤独になるパターンだからね。
とはいっても、ココで是枝監督さんは、それを小津のスタイルでは撮らないで成瀬のスタイルで撮る。
監督はコノ作品を「そして母になる」ドラマとして撮ったらしいけども、ソン・ガンホに関しては「そして父になれなかった」ドラマとしてやっている訳で。
ソコンところは切ないけども、ちょっと粋ですわ。
今回はこれでおしまい。