ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]


自分は観ていないが、先ごろ午前十時の映画祭で再上映されたので、今回はその魅力を語ってみたい。
さて、ジャンルとしてはSFパニックに入るであろうコノ作品は鑑賞後直ぐに他のヤツとは違うのはスグに分かる。
何せ、惑星が地球に衝突する話なのに、他に避難するわけでもソノ惑星を爆破するのでもなく、なんと地球そのものが動く。

もう、これだけでも他よりもぶっ飛んでいるし、事実公開当時もそうゆう評価だったのだが、そう荒唐無稽な話でもない。前に『流転の地球』でも書いたが、極端な話、地球に張り付いている大気が剥がれないくらいに動かせば可能であり、後はその動力源が現実的かどうかだけだから。
実際に、コノ作品が公開された同年にアメリカ物理学会が発行している科学学術雑誌『フィジックス・トゥデイ』に移動する地球を計算したのが論文として体裁されている。もちろん本職が読む専門誌なので同業者の厳しい査読は通ってだ。
そして、コノ作品で池部良演じる科学者が世界中の科学者等に説明するシーンがあるが、この計算をしたのが当時東大理工学部天文学科に助教授として籍を置いていた摂動論で名が知られている堀源一郎 −− 後に東大名誉教授。

なので基礎研究レベルのリアリティはある。
ドラマの作りも独創的で。従来、この手のパニック作品なら、感動的・ドラマチックにするお約束として、「誰かの犠牲的行為」とか「今まで結びつかなかった者同士が一致団結して事にあたる」とかの展開にしてドラマチックな感動を鑑賞者に揺さぶりソコへと導くが、コノ作品ではそうはならない。
それじゃ、どうやったかというと、ある人物をショックで記憶喪失にして、ゴラスが地球に最も接近したところで記憶を呼び覚ます。のだ!
文字にすれば「何じゃそりゃ?」だが、そうなっているのだから仕方がない。情感よりもサスペンス優先なドラマチック。
こんな展開になったのは、当時の上映形式が映画2本立てが標準で −− 2時間半超えだと超大作扱いで、間に休憩が入るのもある −− コノ作品は超大作では無いので、上映時間は89分とタイトなので、情感に訴える事よりもサスペンスに特化したコレを使ったのだろう。
ーー まぁ、ひとつ付け加えるなら、脚本の馬淵薫(別名:木村武)はコレよりも前の『空の大怪獣ラドン』(1956)で記憶喪失を脚本に入れているので、ココでのソレはその応用だろう。
円谷英二特技監督の特撮については、今さら語るところはないだろう。特に南極のロケット基地建設のシーンの特撮は映画における一片の真理、迫力とはリアルの精度を上げることではなく、演出でありどう見せるかである!が、ちゃんとそこに表れている。
ーー ただ、これは円谷の発明ではなく、『メトロポリス』(1927)や『来たるべき世界』(1936)などの未来都市スペクタクルにおける特撮シーンの彼なりの応用なのだろう。
監督:本多猪四郎
特技監督:円谷英二
脚色:馬淵薫
原案:丘美丈二郎
製作:田中友幸
撮影:小泉一
美術:北猛夫 安倍輝明
音楽:石井歓
(データは映画.comより)
訂正:アメリカ物理学会の雑誌はフィジカル・レビューではなく、フィジックス・トゥデイでした。お詫びいたします。
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