えいざつき ~元映画ブログだったポエマーの戯言~

批評というよりも、それで思い出した事を書きます。そして妄想が暴走してポエムになります。

映画閑話:『あゝ決戦航空隊』

お題「ゆっくり見たい映画」

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]

関連記事

eizatuki.hatenablog.com

 

eizatuki.hatenablog.com

 

映画パンフレット】あゝ決戦航空隊 (1974年) 鶴田浩二 池部良 – Books Channel Store

 

今回は右翼側から語った反戦映画についてだが、その前に彼らが語る反戦とは自由主義者や左翼側が重視する人道・人権擁護の視点では無いのは前置きしておく。

 

もう一つ、何故これが右翼側の視点で描かれているのかといえば、原作は保守論客のひとりだった草柳大蔵『特攻の思想』からだが、映画では、反共闘志で、かつては日本の黒幕(フィクサー)のひとりと言われていた児玉誉士夫 -- もちろん鳩山一郎や岸信介を総理大臣にするために援助をしたりロッキード事件にも名が登場する人物 -- の影響が濃厚にあるからであり、これを『日本暗殺秘録』(1969)などの右派に対して共感が高いシナリオを脚本家笠原和夫が手掛けているからでもある。-- 野上龍雄と相良俊輔と共同。ちなみに原作は未読。

 

そして、物語とドラマの中心にいるのが「特攻の生みの親」とも言われている人物の大西瀧治郎(おおにし たきじろう)中将。誰もが直ぐに思い浮かべるのは、いまやネットミーム化した岡本版『日本のいちばん長い日』(1967)に登場する二本柳寛演じる「二千万人特攻論」を主張した姿だろう。

 

だがコノ作品では、そう主張した大西の気も狂わんばかりの心中を描いている。

 

内容は、太平洋戦争開戦当初は快進撃だった日本軍だったが、それも半年足らずで停滞、昭和19年6月からの絶対国防圏(日本が反転攻勢できる範囲)として重要視されていたサイパン島攻防に敗退し、敵に対してむき出しの形となったフィリピン方面を死守するために。米日戦争反対派で海軍軍需省局長だった大西は第一航艦司令長官に任命されて、来たるべき大攻勢作戦のために米艦隊の航空戦力を減らす命令を受けたが、現存する自軍の航空戦力では成し遂げられないと悟った大西は特別攻撃隊、今で言う特攻を作戦として組み入れる。それはそれまでは軍が逡巡していた、人の命を兵器として戦術使用する口火を切ったはじまりだった。

 

これが前半。

 

これが中盤だと、大西は講和(交戦国どおしが戦争をやめる状態に戻す)での条件を有利にするために特攻を推進し、後半にあの「二千万人特攻論」を直言する姿になってゆく。

 

それを主に児玉の視点から語っている。

 

ここは実在した本人の心中ではなく、映画の内容について語るので、それを倫理ではなく論理ですると、前半と中盤はまだ理解できるとして、後半での大西の主張が過激過ぎて唐突な印象を受けるところだろう。

 

これを、どう見たらよいのか?

 

自分の見立ては、コノ作品での大西は最後まで正気だというところだ。

 

正気なので終止理性的人格として行動する。

 

なのに、当初から自身が主張していた、勝てるはずの無い戦争に軍人としては勝つ算段をつけなければならなかったために狂気に陥る。

 

正気なのに狂気。

 

状況に流されないで、自らを律し続けるためにおきる悲劇。

 

これが、コノ作品で描かれた大西だ。

 

これが、そんなに間違ってはいないと確信しているのは、脚本の笠原は後に『二百三高地』(1980)で、あおい輝彦演じるインテリな将校を登場させて、彼もまた戦争の現実と正気の狭間で狂気じみてゆく様を描いているから。

 

二百三高地

特に乃木に上申、というよりも激高する姿はコノ作品の大西とダブるからだ。

 

また、前にも書いたが『大日本帝国』(1982)での篠田三郎演じる海軍中尉とも通じる。

 

そして、その流れの中心にいるのが、昭和天皇なので、勝てるはずのない戦争をはじめたのなら最後まで貫いてほしい。という激しい懇願。

 

それを、ココでは特攻に否定的だったが日本の降伏後に上の命令に従わず連合国に対して戦いを断行、他の者にも決起を促した厚木航空隊事件を起こした小園安名(こぞの やすな)海軍大佐を補助線として描く。

 

あゝ決戦航空隊

彼もまた理性的な大西と同じく正気でありながらも狂気をまとう人物であり、病院の屋根の上で主張する言葉こそが、ここでの核心なのだというのを明確にしている。

 

太平洋戦争に対する責任をコノ作品では一度も登場しなかった昭和天皇に求める。

 

これが、右翼側による反戦主張。

 

しかし、監督の山下耕作はここを「突き放した」冷静さではなく「泣き」の感傷的に描いているために些かにドラマの軸がブレたものになっている。

 

それに、ココでは描かれず、描くとしても膨大過ぎて難しのは、明治以降の国民国家としてまとめるために、時の為政者たちが天皇という存在を立てたがために、「天皇の私兵」と位置づけられた軍人だけでなく、庶民でさえも準軍事要員として徐々に組み込まれてしまっていた、前述した状況の流れを形づくった背景が、終戦当時の余韻を感じている者が多くいた公開当時とは違って現在では希薄になっているがために、それを伝えるにはかなり困難になっているところも厄介。

 

だから、勧めとしても注釈付きになってしまう。

 

しかしながら、一端起これば、これを止めるのはかなり困難になるのが戦争というものなのだと言う現実なのは、コノ作品に関わらず、肝に銘じた方がいい。少なくとも安直に語るべきではないのだ。

 

VODで鑑賞

 

監督:山下耕作
特撮監督:本田達男
脚本:笠原和夫 野上龍雄
脚本協力:相良俊輔
原作:草柳大蔵
製作総指揮:俊藤浩滋
企画:日下部五朗 杉本直幸 佐藤雅夫
製作:岡田茂
撮影:塚越堅二
美術:井川徳道
音楽:木下忠司
録音:荒川輝彦
照明:増田悦章
編集:堀池幸三
助監督:俵坂昭康
スチール:中山健司

データは映画.com

 

 

 

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画備忘録へ
にほんブログ村

映画(全般) ブログランキングへ