ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
スパイダーマンの宿敵として知られるマーベルコミックの悪役ヴェノムをヒーローにしたアクション映画。かつてテレビジャーナリストだったエディ・ブロックはライフ財団の設立者カールトン・ドレイクに違法の人体実験についてのインタビューをしてクビになり、恋人だったアン・ウエインにも愛想をつかれ別れて、今ではダウンタウンの片隅で家賃もままならない生活を送っていた。そんな折に財団の研究者の一人から「宇宙の生命体で人体実験をしていると」告白されて財団の施設に侵入するが、その生命体”シンビオート”に寄生されてしまうことに……。
締めから書いておこう。
ヴェノムかわいいよヴェノム
ズバリ、デートムービーです!恋人と別れ話をしたいのなら『ザ・プレデター』だが、いい雰囲気になりたいのならコレです。超おススメです!
しかし、最初は「自分はいったい何を観ているんだ?」感が頭の中でグルグルと回っていた。定番の展開なら「正義の心をもったエディがヴェノムの侵食に勝ち、正義の心と悪魔の力を手に入れたヒーロー」とか、「正義の心もったエディに反発しながらも、つい渋々と従ってしまう相棒」みたいなのを予想していたが、まったく違っていた。
ドレイクにインタビューしたエディに正義感はあるものの、本当の姿は、ただのヘタレで「負け犬」なのだという描写がおそらく30分以上も描かれる。まさにどん底とヘタレとのデススパイラル。
それと並行して四体のシンビオート -- 一体は逃亡中。-- で人体実験が描かれて、そこで人体に寄生したシンビオートは結局は宿主(人体)を蝕み殺してしまう事実も描かれる。今回のラスボスであるライオット(声はドレイクと同じリズ・アーメッド)もヒョイヒョイと宿主を変えている。
そんなエディにヴェノム(声もトム・ハーディ)が寄生するのだが、もうのっけからヴェノムのイイひと(生命体?)出しまくりだ。「お前は世話焼き女房か!」と突っ込んでしまったくらいにだ。
それにシンビオートが結局は宿主を殺してしまうのにヴェノムは、それを防ぎエディを延命させようとする。
これは何を描こうとしているのか?
その輪郭らしきモノがやっと判るのはクライマックス直前のエディとヴェノムのキスシーンだ。ブロマンスだ。エディとヴェノムは生体ではなく魂のレベルで適合する。
ただ、ブロマンスだとあまりにも美しすぎる。なぜならヴェノムは前半で延々と描かれたエディの「負け犬」に適合しているからだ。だからダメブロマンスだ。
さらに俗っぽくいうとヴェノムにとってエディは炬燵なのだ。コタツですよ。寒い日にいったん入ったら、そのここち良さで「もう、ここから出たくない」の気持ちにさせる魔の家電ですよ。そんな快楽を知ったら、もう元には戻れないし、壊れないように保守もするでしょ。それです!
しかもヴェノム。見た目は怖そうだがシンビオート世界(?)では「負け犬」なので、まさに「理想の引きこもり場所を見つけた」って感じがアリアリとする。
確かにダークだ。しかし人類の脅威ではなく、ダメ人間としてのダークだ。
かたや敵役のドレイク=ライオットは文字通り「勝ち組」だ。
そんな奴らが「勝ち組」を倒すのだから、これはもちろんヴィランでもヒーローでもく、まさしくダメ人間賛歌の映画だ!
そして、この映画の見所は、そんな「エディとヴェノムをただ愛でる」だけだという、他愛のない。……それ以上のモノは無い!
ここで締めの言葉に戻る。
追記:基本は「愛でる」のがここでの楽しみ方なので、筋違いなのは承知だが、不満はある。物語は観客の快楽にそった溜飲を下げるための記号のみで処理しているだけで雑だし。エディが絡むアクションは良かったけども、CGIが主のアクションは見づらい。カットしている個所もあるらしいし、なんか、こう詰めの甘さが……。
VENOM Official Trailer #2 - Tom Hardy
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