ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
日本のSF漫画木城ゆきと原作『銃夢(ガンム)』を『タイタニック』のジェームズ・キャメロンが映画化。空中都市ザレム。そこから棄てされた廃棄物からサイバー医師のイドは脳が無傷のサイボーグ少女を見つけ治療した。記憶が欠落している少女にイドはアリータと名付けて娘として育てる。アリータは街で青年ヒューゴと出会い、淡い思いを抱くが、彼女はその見かけとは裏腹に驚異的な戦闘能力を持っていた。
ジェームズ・キャメロンの出世作『ターミネーター』はアーノルド・シュワルツェネッガー演じる殺人マシーンのキャラに強い印象をもっていきがちだが、実は狙われるサラ・コナー側から見れば立派なシンデレラストーリーだ。何せ、そこら辺にいそうな不器用な娘が、未来からやってきた男性と恋に落ち、世界を救う救世主を生む。といった物語はロマンのなにものでもないからだ。
結論からいえば、自分は『アリータ』にはノレなかった。何故なら……
アリータちゃん カワ(・∀・)イイ!!
からだ。
コアなファンからは「可愛いは正義!」だろうが、それよりも自分にはカッコイイこそが正義!だし、昔、一通り読んだだけの記憶が曖昧な超薄い読者である自分は原作『銃夢』の主人公ガリィには可愛さよりも、カッコよいに近い「凛々しさ」を感じていたからでもある。簡単に云えば、好みじゃない。
とはいえ、キャメロンが映画化を知ったときに、こうゆう感じにはなるだろうと予想はしていた。キャメロンのドラマは物がバンバン壊れたり人がボンボン死んでゆく描写と正反対に甘々な愛をベースにしたロマンティックな状況をよく設定するからだ。その間にカッコよいガジェット描写やスペクタクルを入れてくるので、その甘々が感じにくいだけだ。
それのバランスが最も上手くいった例が大ヒット作である『タイタニック』になる。あれも甘々な恋愛ドラマの傍らで人がボンボン死んでゆく映画でもあるからだ。だから、一般は恋愛を楽しみ、自分のような捻くれた者は沈んでゆくタイタニックと人々の死様に拍手する。といった感動の棲み分けができた娯楽でもあった。
キャメロンは見かけによらず乙女な映画監督なのだ。
そんな乙女なキャメロンが『銃夢』を手掛けるなら、それは恋愛の方を描くはずだし、そのためにはガリィことアリータを魅力的なキャラにするに決まっている!そしてソコで描かれた彼女は誰もが「カワ(・∀・)イイ!!」と認めるキャラになっている。ボディを変えることで女の子から少女に変わる思春期な仕掛けもさることながら、CGIの質感だけではなく、動きや表情さえもデータとして取り入れるパフォーマンスキャプチャーでオレンジやチョコレート食べる彼女の可愛さを強調しつつ、独自アクションのパンツァークンスト(機甲術)を駆使するギャップで、その魅力が倍増している。これは映像技術の勝利であり、ハリウッドではジョージ・ルーカスと並んで最先端映像技術にこだわりつづけたキャメロンらしさでもある。
しかし、この映画でのキャメロンは制作・脚本だけで監督ではない。監督は『フロム・ダスク・ティル・ドーン』や『プラネット・テラー in グラインドハウス』のロバート・ロドリゲスだ。彼は情感よりケレン味を優先するので誤解されがちだが、独立系だけあってスケジュールと予算を守るから、真面目だ。第一に、予算を入れてもすぐには判らない情感よりも予算を入れた分だけすぐに見栄えがして判りやすいケレン味のどちらを選ぶかといえば後者にきまっているので真面目にならざるを得ない。
そんな乙女なキャメロンと真面目なロドリゲスの唯一の接点が残酷ショーなので、レイティングがPG-12だけあって機械とはいえ見事な肢体切断ショーになっていてソコだけ期待に応えるノリノリな楽しみもあるのだか、接点がそこだけで、真面目なロドリゲスはキャメロン脚本(レータ・カログリディスとロバート・ロドリゲス共同)の乙女な部分を巧く処理できていない。だから恋愛を通してアリータの成長を描くドラマが着地できずに締まりがあまりよろくない結果になっている。
締まりがよろしくないために、俗にいう「第一部、完」な終わりになっていてファン以外の一見さんからみれば「これで終わりかよ!」なっている。これがキャメロンが監督していたら予算超過も当然のスペクタクルがあったり、ロドリゲスがすべて脚本を書いていたら情感(乙女)な部分を極力排除したアガる展開になって観客もそれなりに満足していたのかもしれないが、そうはなってはいない。
しかし、批判的なことを書いてはいても自分もラストにあの「お方」のシルエットを見たら、グッときた人なので、あまり悪い印象にとりたくない気持ちもある。ハッキリいえば、次が観たい!
そうゆう訳で(?)映画同様に自分の感想も締まりの悪い終わりになるのであった。
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