ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
ジョルジュ・アルノー原作&アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督による同名フランス映画をリメイク。南米の某国で四人の男が集まった。殺し屋、テロリスト、投資家、マフィア。表の世界で罪を犯したがために、この地の地獄で身を潜めていなければならない男達。そんなある日300キロほど離れた山の上の油田で爆発事故が起こる。火を消すには爆薬による爆破が必要だったが、それは管理が図斬で今にもニトロが漏れ出しそうな危険な物だった。それを油田までトラックで運ぶ仕事を四人は引き受ける。この地獄から抜け出すために……。
数日前、『恐怖の報酬 オリジナル完全版』を観ることができたのだが、文章が日々を過ぎてもまとまらないので、そのまま感想を書くことにします。
アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督作品といえば『恐怖の報酬』と『悪魔のような女 』しか観たことがない自分にとって『恐怖の報酬』は手垢がつきすぎた映画だ。なにせこのアイディアを使った作品は数多くあるのだから。
しかし、それでも自分は予告を見た段階で「これは傑作に違いない!」という確信があった。何故なら予告だけでも画のイメージが『ブルース・ブラザース』、『エイリアン2』、『プレデター』、『ダイ・ハード』、『ダンテズ・ピーク』等々を思い出して、胸躍らせたからだ。だから、なので、地元の上映まで指をくわえて待ちつつ、いざ上映開始になったら一回だけで、社会人としては難しい条件でありながらもなんとか時間をやりくりして、観ることができたのだが……
……………………………………………………………………………グレイィィトォォ!!
何ですか、この絶望だけでできた絶望しかない、絶望エンターテインメントは!
ホラー映画ファンからはすぐに反論が来そうだが、そうじゃないんだよ! 絶望の密度が全然ちがうんだよ!濃いの!圧倒的に濃いのよ。この映画 !!
セットやCGを使わないロケ主体の4Kデジタル修復で現れた緑の色合いと暑苦しいは、言葉には言い表せない奇妙な閉塞感が漂うし。それに「希望を感じたら即、死!」という『恐怖の報酬』のリメイクらしからぬ原題 "Sorcerer" (魔術師)という意味がよーく解る展開になっているんだよ。
ゲームならクソゲーだが、映画にするとグレートになる!つーか、なったのが、このフリードキン版『恐怖の報酬』なの。
最初の四人の男達のエピソードのひとつに結婚式の風景がチラリと見えるが、よく見たら花嫁の顔に青痣があってあきらかに(おそらく花婿)殴られた画から、もうこれは「愛なき世界へようこそ」しかない。
そして確かに、たったひとつある「愛」が最終的には届かない。
そして、四人の男のひとりにまとわりついていた死のフラッシュバックを振り払うことができた後に起こる結末は希望を確実に潰しにかかってきているとしか考えられない。
フリードキンは明と暗の境界を裏表ではなく濃淡で描いていく監督だが、今作ではこれが暗をギリギリまで描いていて容赦がない。これを一神教の人間を宗教以前の神がいたぶる構造になっていると、分かりきった分析もできるのだけれども、そう冷めたことが云い難いのが、この映画だ。しかもソレを娯楽として撮っているのが超おかしい。
だから、「狂気の映画」という文字で単純にかたずけてはいけないと思っていても、そうしなければ納得できない作品でもある。
フィクションではたまに、内容よりもソコから発する「毒気」に中てられてしまうのがあるが、フリードキン版『恐怖の報酬』もそうゆう類なのだと。思うしかない感想でした。観ろよ!
完全版が日本上陸/ウィリアム・フリードキン監督『恐怖の報酬』【オリジナル完全版】予告編
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