ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
ネタバレしても大丈夫な紹介モード。
今回は去年に輸入盤で観なおしたコノ作品を。
さて、このブログで何回も主張しているが、観客に物語やドラマの感動を誘うキャラ配置を含む鉄板のプロットというのがあって、その代表格といえるべき作品が『七人の侍』(1954)、もちろん黒澤明監督作品だ。
あと、黒澤作品だと『用心棒』とか『天国と地獄』とかも鉄板プロット。
鉄板プロットなので、予算や演出が多少乏しくても物語の展開(運びとも言う)のみで楽しませる事ができるので完成の保証はホボされているトコロはある。
だから、低予算で作られたコノ作品も、ソコソコ楽しめるレベルにはなってはいる。だから後はいかに細部にツイストをかけられるかにある。
製作総指揮は、あの『私はいかにハリウッドで100本の映画をつくり、しかも10セントも損をしなかったか』なB級映画の帝王と謳われたロジャー・コーマン。
そして彼を彩る伝説のひとつに当ブログ『殺人者はライフルを持っている!』でも書いたように、ピーター・ボグダノヴィッチ、ジョン・ミリアス、ジョナサン・デミ、デニス・ホッパー、ジャック・ニコルソン、ピーター・フォンダ、ロバート・デニーロ、マーティン・スコセッシ、フランシス・フォード・コッポラ、モンテ・ヘルマン、ゲイリー・カーツ、ロン・ハワード、ガス・ヴァン・サント、などのキャリアのない彼らに映画撮影のチャンスを与えて才能を輩出したところにある。
そのコーマンが世界中がSF映画ブームに沸いていた頃、ソレに一丁噛みしようと様々な特殊・視覚効果の会社に特撮を発注の打診をしたが、予算の折り合いがつかず「なら、自分のSFXスタジオ作ったるわい!」とばかりにスタッフを募集、その中に若き日のジェームズ・キャメロンがいた伝説がコーマンの尾ひれに付いている。
つまり、コレが無ければキャメロンのデビューは変わっていたはずで、代表作のターミネーターがどうなっていたのかは分からないのである。
-- ちなみに、この時に出会ったのが『ターミネーター』(1984)や『トレマーズ』(1990)などのプロデューサーであるゲイル・アン・ハザードと俳優のビル・パクストンなのもアノ界隈ではトリビアになっている。
でも、そのキャメロンも当時はペーペーな新米である、美術監督をやったけど監督ではない。
そのキャメロンに美術監督にしたのは、コノ作品の監督でもあるジミー・テルアキ・ムラカミ。代表作は『風が吹くとき』(1982)『スノーマン』(1982)。
アニメーションが本業なのか?と思われそうだが、ムラカミは『レッド・バロン』(1971)や『モンスターパニック』(1980)でコーマンの下で働いていたのでソノ流れらしい。
脚本はジョン.セイルズ。代表作は『メイトワン 1920』(1987)や『エイト・メン・アウト』(1988)など。映画ファンを名乗る人なら観ていなくても、観るリストには入れるべき作品を撮ってきた奴だ。個人的には制作に関わったテレビシリーズ『弁護士シャノン』が好きだった。
音楽は『タイタニック』のジェームズ・ホーナー。映画音楽はコレがはじめて。キャメロンとの出会いも多分ここからだろう。
鉄板プロットに、ココにも若き才能が終結している。
これもまた伝説のコーマンの目利きが功を奏した作品なのだ。
もう察しがついたかもしれないが、͡コノ作品もある程度の面白さは保証されている。
ある程度、というのは。やはりコーマン作品らしく低予算作品なので、異国でロケをすることもないし、撮影用スタジオはスター・ウォーズや007のような広さもなく狭い空間を使い回しという状況。早い話が画面に壮大さにチョイと乏しい。
それでの「ある程度」。
それでは、SFX以外にコノ作品にどこに魅力があるのかと言えば、ズバリキャラクター。彼等が魅力的に描かれているからこその「面白さ」。
それでは、その紹介を。
〇ジャド
事の発端である惑星アキールの住人で、危機に際して助っ人を求めてアキールを旅立つ。そして童貞。
〇ナネリア
武器を求めて立ち寄った宇宙ステーションにいた博士の娘。コンピュータオタクであり、ジャドを助けるために一緒に宇宙を旅する。そして処女。
〇カウボーイ
まんまカウボーイ、宇宙のカウボーイ。盗賊に襲われても動じず、のほほんとマイペースな男で、それを助けたジャドのために助っ人に入る。
〇ゲルト
凄腕だったが、命を狙われる羽目にあって隠れている暗殺者。そこに迷い込んだジャドがアキールに住まわせる事を条件にジャドに味方をする。
〇ネストール
5人のクローン人間。種族全体が精神を共有していて一心同体、それ故に退屈がたまらずに退屈しのぎにジャドに味方する。こんなナリだが一番頼りになる奴。
〇ケイマン
トカゲ型エイリアン。ジャドとは別行動で助っ人を探していたナネリアがケイマンの宇宙船に囚われた際に、アキールを襲っている集団のボスが彼の故郷を滅ぼした宿敵と知って復讐のためにジャドに味方する。
〇セント・エックスミン
闘志あふれる女狂戦士。彼女の種族は戦い死ぬ事を生きがいにしているので、華々しく死ぬために嫌がるジャドにアキールまで無理矢理ついて来る。
以上だが、あとひとつだけ個人的に好きなキャラとして上げておたい。ジャドの宇宙船のコンピューターの<ネル>。AIなのに姉御口調でジャドを𠮟咤する姿がイイ。『ガンヘッド』、『ナイトライダー』に次ぐ好きなAIキャラベスト3のうちのひとつだ。
そして、悲しき最後を遂げるジャドの妹。
こうしたキャラクターが絶妙に配置されていて、コノ作品の面白さを引き出している。
BDで鑑賞。
監督:ジミー・T・ムラカミ
脚本:ジョン・セイルズ
原案:ジョン・セイルズ アン・ダイアー
製作総指揮:ロジャー・コーマン
製作:エド・カーリン
撮影:ジョージ・ドッジ
音楽:ジェームズ・ホーナー
1980年製作/アメリカ
原題:Battle Beyond the Stars