ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略][加筆誤字修正有]
リップヴァンウィンクルの花嫁 : 作品情報 - 映画.com
岩井俊二の作風を一言でいうなら「浮世離れ」だ。だからリアリティよりいわゆる雰囲気で映画を進めるタイプの監督だ。だからメッセージはいつも同じ「こんな世界がある」だ。だから『リップヴァンウィンクルの花嫁』も気持ちの良いくらいリアリティが破綻している。しかし、だからこそ『リップヴァンウィンクルの花嫁』は岩井俊二の最高傑作ではなく、岩井俊二がいつの作品もファンに「愛されている」映画監督であることを証明している。だから次の作品も「最高傑作」になるのは決まっている。
ちょこっとだけ思ったことを書きます。
この映画の弱点は主人公が恐ろしく受動的。もっとハッキリいえば恐ろしくヘタレではないと映画が成立しないところだ。観た人ならわかるが、映画の進行そのものがヘタレでないと展開が進まないのが誰もが気が付くからだ。
そんな主人公に感情移入できるはずもない、観ている人に「こいつバカじゃない」と思われるのが当然だからだ。ところが実写だとそうなのだが、アニメだとそんなキャラが成立する、いわゆる「キャラの魅力で物語を引っ張る」だ。最近だと……
成瀬 順 - 映画『心が叫びたがってるんだ。』 ← 彼女がそう。
『心が叫びたがってるんだ。』のヒロイン成瀬順はまさにそんなタイプ。「変だけど、かわいい」つまり「萌え」だ。
「萌え」が進行の潤滑油となって展開を進める。ノイズにならずに観てられる。
二次元だとそれが成立するが三次元だとリアリティの無さが露呈していまう可能性がある。二次元の「萌え」は何かが「欠けている」ことで魅力をつくるものであり、「欠けている」部分の大体が一般人が感じているリアリティに抵触する場合が多く、三次元で誇張が難しい映画では至難の技だからだ。リアリティが無くなり映画に感情移入ができなくなる。
『リップヴァンウィンクルの花嫁』の主人公の七海はそうとうにヘタレだ。そして映画はアニメではなく実写なので「萌え」は使えない。だから、本来なら『花とアリス』 のような掛け合いすらない前半が恐ろしく退屈になるはずなのだが、そうなっていないのはひとえに黒木華の演技だといえる。
まるで一人舞台を観ている感さえある。もうこれは黒木華が主役というより座長の映画だといってもよい。(あたりまえか)
つまり結論は……
黒木華は「萌え」を超えた!
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