ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
マーベルコミックの異色ヒーロー、「デップー」こと『デッドプール』の続編。不死身の身体を手に入れた代わりに醜い姿になったデップーことウェイド・ウィルソンは前作のなんやかんやで?解決して、今までどおり悪人狩りと最愛の恋人であるヴァネッサとイチャイチャしていたが、そんな彼に突然のホニャララが。消沈しながらもX-MENの仕事を手伝うはめになったデップーが出会ったのはファイヤーフィストこと少年ラッセル。そして彼を殺しに未来からやって来た最強の男ケーブル。ひとりじゃ戦えないと悟ったデップーは「ヒーロー求人」をして仲間をあつめるが、さて、どうなる?
演劇の第四の壁の破壊が意味するのは観客を傍観者ではなく当事者として認識させる手法だ。例えば『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』だと「あんたらゲラゲラ笑ったり、同情して泣いてるかもしれんが、あたいらとお前らは所詮同じ穴のムジナなんだよ!」と観客に無理矢理に引きずり込み居心地の悪さを意識させる。
ところが前作『デッドプール』でどうして第四の壁の破壊が行われたのかといえば、この映画の泥臭さとベタさを隠すために使われている。簡単に言うと「照れ隠し」だ。前作でヒロインの姿を変わり果てた主人公がそっと見つめる。なんて場面で思わず「昭和か!」と突っ込んでしまった。くらいに泥臭い。何よりデップーの出自(らしき)ものと不死身の男になった理由がベタのつるべ打ちに泥臭い。現代のナウなヤングが到底受け入れにくいキャラだ。それに共感させ居心地の良さのための第四の壁の破壊でもある。『アイ,トーニャ』の逆をやっている訳だ。
今作も「昭和か!」に磨きがかかっている。ファミリー映画と宣言しているだけに泥臭さに拍車がかかり、それを隠すためにギャグも前作以上にこれまた「昭和か!」なネタが連発する。デップーがふんどしでアレするなんてアニメ『いなかっぺ大将』だし、文字通り有らぬ方向でケーブルを抑え込む関節サブミッション技(?)や予告でもあるケーブルの弾を弾き返している振りをして実は?とか、グロテスクな切断とかのギャグは漫画『マカロニほうれん荘』のひざかたさんギャグだし。しまいにはザ・ドリフターズのコントまでする始末。とんねるず以前のギャグがてんこ盛りなのがこの映画だ。完全にオッサン向けのギャクなので「大丈夫か?」と思ってしまうが、一周してナウなヤングには新鮮に感じるかもしれない。
しかし、ドラマの軸は今作は弱い。前作の敵役フランシスは倒すべき相手として当然の資格をもっていたが、今回の敵役はケーブルではなく、ポリティカル・コレクトの視点からつくりだされた敵役なので対決するのには「うーん」だ。だからデップーの見せ場は別に作って、敵役もギャグで倒す展開にしたのだろう。それにしても今作ではデビッド・リーチ監督の特徴「スタイリッシュな雰囲気とゲームを思わせるタクティカルなアクション」がギャグで封じ込まれていて、どうして起用されたのかが分からない。もしかしてあの007風のタイトルだけで起用したのか?だとしたら贅沢なギャクではある。
と、まあ今作はアクション映画ではなく楽しい楽しいギャグ映画が自分の感想になる。スラップスティック・コメディより泥臭いドタバタ喜劇だ。だから、今作の弱点も、そして最大のクライマックスであるエンドロールの超御都合主義もバカボンパパの悟りの境地「これでいいのだ」の 昭和か!で締める。
映画『デッドプール2』予告 Extended Ver. (前作おさらい付き)
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