ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
アメリカ麻薬戦争をリアルに描いた『ボーダーライン』の続編。アメリカ国内で起きた自爆テロ事件。そのルートはメキシコからだった。麻薬カルテルが密入国ビジネスに手を染めていたのだ。事態を重んじた政府はカルテルをテロ組織と認定、CIA工作員であるマット・グレイヴァーにメキシコの麻薬組織の撲滅を依頼する。マットが立てた計画は、カルテルのボスの娘を誘拐して抗争までに煽ること。マットは旧知の暗殺者アレハンドロに声をかけ作戦に入るが、やがてそれは想定外の事態へと展開してゆく。
続編を語る際に決まり文句で使われるのは「続編を見なくて大丈夫」だが、この映画についてはそれを使うのは躊躇してしまう。何故なら『ボーダーライン ソルジャーズ・デイ』は前作『ボーダーライン』を別の視点から見た映画だからだ。前作の変奏曲(バリエーション)、いわゆる外伝的位置にあるといえる。前作のモヤモヤ(不穏)だった部分を少しシャープに仕立てたのが今作だ。
前作『ボーダーライン』はエミリー・ブラント演じる主人公ケイト・メイサーを置くことで彼女の視点で、法の境界が曖昧になり、正と邪の明暗も灰色になってゆく展開になっていてマットやアレハンドロもその視点からしか描かれていなので、彼らの心境を察する程度しかなかった。モヤモヤ(不穏)の部分のところだ。
それに比べて今作では法の境界はいきなり無くなり、正と邪の明暗もすぐに濃い灰色になる。
また心境の描写はウェットだ。しかし、決して水浸しではなく、乾いた大地に一滴の雫がしたたり落ちてそれがスッと乾く程度のウェットだ。
前半は『ボーダーライン』のヴィルヌーヴ演出をなぞり後半の想定外の展開から、続編としての独自のカラーが表れる。先述した部分がウェットのソレだ。特に後半の展開は長谷川伸の小説 -- 自分は映画だが -- の『関の弥太っぺ』をシビアにした雰囲気で、また笠原和夫脚本作品、特に『県警対組織暴力』を思い出すので、ある意味で馴染みやすいのだ。
また、ステファノ・ソッリマ監督の手腕は巧みだ。無駄な部分、ハッタリの部分がなく、最後まで締まっているし 、特にオープニングからは数分間は「面白れぇ!」なので、傑作なのだ。これが贔屓目でも優秀作なのは間違いない。
しかし、この映画の不運(?)は、あの『ボーダーライン』の続編なので、どうしてもそれと比べられてしまうところだろう。それに、テイラー・シェリダン脚本らしからぬいびつな展開なので、ラストシーンも含めて、どうやらこれも昨今の事情に倣って次作を意識したクリフハンガーになっているらしく、終わりはピリオドではなくセミコロンを印象づける様になっている。なので前作とは違う別のモヤモヤが生まれてはいる。
だた、自分はこの変奏曲を充分に楽しんだし、続編も期待しています!
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