ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
日本の怪獣ゴジラを題材にしたアニメーション映画であり、三部作の最終章でもある。前作でゴジラを倒せなかったハルオ・サカキの行為はアラトラム号では責任問題で人間対ビルサルドの争いに地球上では、あの惨劇に生き残った者としてエクシフのメトフィエスの誘導により預言者として認められて、返って孤立を深めていた。やがてメトフィエスは彼等の神であるギドラを召喚してゴジラと対決させる。
こちらの続きになります。
このアニメの疑問点は四つ。
A:ギドラはどのような怪獣か?
B:モスラはどのような怪獣か?
C:エクシフの宗教とは何か?
D:ハルオの最後の意味は?
だろう。
この四つの疑問にすべて説明できるのは宇宙論のホログラフィック原理だ。メトフィエスが言っていた「高度な科学は宗教になる」の根拠はコレだろうし、脚本の虚淵玄(うろぶちげん)は今作ではこれを参考に物語を組み立ているのは間違いない。
ホログラフィック原理はかなり雑に言えば「宇宙での本質は情報であり、物体とエネルギーは副次である」という相対論と量子論が統一された弦理論からの宇宙論モデルだ。これはブラックホール情報パラドックスの解決、「ブラックホールに落ちた物体は消滅せずにブラックホールの表面に情報として残る」というモデルから導き出されたが、この二つを優しく説明しているのが、このサイト。
さらに雑にいうと「重力を含む力とは弦理論での弦から発する振動で、我々が物体とエネルギーが認識できるのはそのためで、それはホログラムと同じだ」を主張する宇宙論モデルだ。それは候補のひとつで決定ではない。
その考えを怪獣として使ったのがこの三部作だ。ようするに「SFの視点で怪獣を描いた」といってもよい。
ここで先述した四つに答える。
A:ギドラは次元を横断できる怪獣である。アラトラム号の異常な最後とマーティン等の観測機器に検知されないのはそのためであり、そして次元を横断できるので、その本質はワームホールかブラックホールと同じ構造であるのは当然で、ギドラがゴジラを喰うのはブラックホールに落ちた物体が表面に情報として残るのと同じ性質を持っている。つまりゴジラを情報として記録している。
B:モスラも別の次元に棲む怪獣である。ただし、ギドラのように次元を横断できる能力は持っていない。だからフツアの民とは精神感応(テレパス)でしか交流(会話)ができない。
C:エクシフの宗教としてのドグマは「この宇宙の本質は情報であり肉体は仮の姿にすぎない」であり、ギドラに喰われることは「自身の本来の姿に帰ってゆく」ことにすぎない。
D:ハルオの最後は自分が人間であるがゆえに起こる「憎しみ」とメカゴジラシティのテクノロジーの「情報」をゴジラによって完全に消滅することで、その「情報」を消去した。それは人間にある「ゴジラを作り出すカルマ」を絶ったことでもあり、必然として「ゴジラを倒した」ことにもなる。
そのハルオの想いはフツアの民であるマイナとミアナも知っていて、憎しみをその前兆で葬り去る神としてハルオを讃えた。
ここまでピンときた人もいるだろうが、宗教的・哲学的に語られてはいるが、本質として円環の理 (えんかんのことわり)を書き換えたアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』の主人公と同じだ。つまり『まどか』と『アニゴジ』は描かれているテーマはまったく同じである。
ここから見えてくるのは自分が『怪獣惑星』で論証した「自由意志を抑圧するシステムに対する反逆」という虚淵玄の特徴が『アニゴジ』でもはっきりと表れているということだ。
「自由意志こそが人が捨ててはいけないものと。捨ててしまえば、それはもう人ではない」なら、ハルオはそのために死んでいった。だから『アニゴジ』三部作は最初から首尾一貫している。
そうゆう意味ではこの『アニゴジ』も虚淵イズムに染められているともいえる。些細な部分は外れたが、やはりこのアニメも虚淵作品だという事になる。
問題はそれを優先するあまりに、映像の快楽を提供する映画、しかも娯楽としては、この『アニゴジ』は失敗しているというところだ。怪獣バトルが無いのはいいとしてもそれに代わる何かが『アニゴジ』にはなかった。『まどか☆マギカ』にはキャラクターや劇団イヌカレーのアニメーションという魅力があったのにだ。
総評としては、新しいモノを生み出そうとする意気は買うが失敗作だったとまとめるしかないのが自分の気持ちだ。
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