ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
9・11直後に行われたテロとの戦いに身を投じたアメリカ陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の隊員たちの実話を描いた戦争アクション。米同時多発テロ翌日、対テロ戦争の最前線部隊に志願したミッチ・ネルソン大尉は12人の部下と共にアフガニスタンへと赴任し、テロの主導者を匿う組織タリバン封じ込めでマザーリシャリーフを奪還するために現地のドスタム将軍と接触するが現状は予想以上に深刻で、ネルソンら12人は険しい山岳を馬で5万に及ぶタリバン兵と戦わなければいけなくなる。
紹介で実話 --原作は未読 -- と書いたけれども、実話というには設定ができすぎで、ちょっとびっくりする。主人公のネルソンはこの作戦までは人を殺したことがないのにもかかわらず、いざ事になると誰よりも勇敢な行動をするし、自制的な感情も持っていたりで古典的「ザッツ主人公」なキャラクターだし、12人のグリーンベレーは絵に描いたような男達だし、怪しげな諜報部員は出るし。現地の少年との交流はあるし、頼りになるはずの古参の男が事になると倒れて頼りにならずにサスペンスが生まれるし、文字通り食えない男のドスタムはネルソンとの交流で少しづつ変わってゆく等々、戦争アクションのテンプレな展開がてんこ盛りなので目新しさがまったく感じられないのが逆に新鮮という妙な出来上がりになっている。
なにより「馬で戦う」がもう西部劇だ。これで早撃ちとかあったら現代を舞台にした西部劇としても通用する。そんなシーンはないけど。
もちろん描かれるのはネルソン大尉を含む12人のグリーンベレーの英雄的行為だ。ショットもそれを多く印象づけるベタな画が連発して、特に爆撃で馬ごと吹き飛ばされて気を失ったネルソンがタリバンを撃った後に立ち上がると同時に馬も立ち上がるワンショットはベタだがグッとくるし、これまた馬が戦場を駆けるこれまたベタなショットもある。その他にベタなショットが数多くある。
これほどあっけらかんと英雄的行為を演出できるのは2011年のアルカイダの主導者オサマ・ビン・ラディン殺害で対テロ戦争が一応終結したのと、大義が不明瞭なイラク戦争に比べ、アフガ二スタン紛争は大義が明瞭だとアメリカ国民の大半が考えているからなのかもしれない。いち(SF)映画ファンから見ればジョン・グレン監督『007 リビング・デイライツ』を思い出して、その種をまいたのはアメリカが対ソ連(現ロシア)で彼らを育て上げたみたいなものなのだが……。
ちなみに映画だとネルソン達の活躍でタリバンは弱体化していった印象だが、現実はアフガニスタンの南部に位置するパキスタンでタリバンを支持する組織がテロを行い、その一部はキャサリン・ビズロー監督『ゼロ・ダーク・サーティ』でも描かれている。
個人としては「そこそこ面白い」なので、題材が微妙なだけに無理にはおススメしないが、この映画が他の戦争アクションと違うのは、クライマックスで主人公達を苦しめるのはソ連の多連装ロケット砲BM-21なところ。主人公達の作戦目的が現地の軍属に協力してピンポイント空爆による支援なのだが、その優位を崩しピンチに落ち込ませるのがこの兵器だからだ。戦車や戦闘ヘリに比べて脇役に甘んじていた存在がこの映画では目立っていたので、感想を「佳作」としとします。

12 Strong (Original Motion Picture Soundtrack)
- アーティスト: ロアン・バルフェ
- 出版社/メーカー: WaterTower Music
- 発売日: 2018/01/12
- メディア: MP3 ダウンロード
- この商品を含むブログを見る