ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
東京湾羽田沖で大量の水蒸気が噴出し、東京湾アクアラインでトンネル崩落事故が発生する。政府は海底火山か熱水噴出孔の発生を原因と判断して対応を進めようとするが、内閣官房副長官の矢口蘭堂は投稿されたネットの動画から正体不明の巨大生物が起こしたものとして進言するが一笑に付される。しかし、その正体不明の巨大生物は多摩川河口から遡上、専門家の意見であった「陸上では立てない」をも覆して蒲田に上陸する。それらは東京湾で死んだある男が仕掛けた企ての序曲に過ぎなかった。
庵野秀明 監督
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ゴジラ話。エメゴジ、ギャレゴジに続いて最後はアンゴジ。ちなみにアンゴジの名は自分が勝手につけました。
とは言うもののアンゴジについての感想は、これまでの繰り返しになってしまう。怪獣映画としては異質の部類に入るのがこの映画だ。だから面白い。
第一にアンゴジはゴジラではない。『ゴジラ (1954)』から付いていた象徴は「核の申し子」であり、戦後日本の「怨念」そのものだ。アンゴジにはそれが無い。ただAからBへと移動するただの物体だ。設定として、放射性同位体の半減期を極端に減らす核変換の能力を内蔵しているのがアンゴジなので生物と定義するより、微生物が集合している「動く蟻塚」といった方がよい。象徴性を廃したそんな存在に「核の申し子」や「怨念」とかの象徴は背負えない。だからゴジラではない。
代わりに怨念の部分を背負っているのは、アンゴジでは写真(映画監督 岡本喜八)でしか登場しない牧悟郎だ。ゴジラがもっているメッセージ性は彼がすべて請け負っている。だからアンゴジでは牧こそがゴジラなのだ。
しかし、それでも巨大な物体が都会で移動すれば甚大な被害を及ぼす。そうゆう意味でアンゴジはディザスター映画の側面が強い。もちろんこれは東日本大震災以降の災害を想起させる意図として見てもよい。
つまり、従来のゴジラのイメージを崩さずに、それで起こる災害を見せ場にして要素を分離できたのがアンゴジの最大の特徴だ。それで一般客とうるさいゴジラファンの気持ちを両方つかんだ。
そして、ゴジラのイメージを損なわずにリフレッシュできたのがアンゴジだ。
これができたのは誰もが指摘するとおり庵野秀明監督が作家性を損なわずに娯楽映画を撮ることが出来たためだろう。それを一言で表せばオタクの妄執だ。
かつて観てきたモノへの不満、俺ならこう撮る!を実現できたのがこの映画だ。
ここに一般客は新鮮さを感じ、特撮・怪獣ファンはその造りの巧さに感動する、という感情の二分化もできている。
これはアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』でかつてのロボットアニメをリフレッシュした手法が怪獣というジャンルでも成功したことを意味することでもあるのだ。
追記:アンゴジには岡本喜八監督の二つの作品が影響されて作られているのだろうと自分は考えている。ひとつは誰でも指摘する『日本のいちばん長い日』。そして、この映画と対で語られる『肉弾』だ。特攻という暗いテーマを軽妙(と、いっても愉快な気分にはなれない)に描き、ラストで現代(1968年) に白骨となって帰ってくる物語は「好きに生きられなかった」人間の物語でもあるからだ。アンゴジと対義的ではないか。
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