えいざつき ~元映画ブログだったポエマーの戯言~

批評というよりも、それで思い出した事を書きます。そして妄想が暴走してポエムになります。

キングスマン:ファースト・エージェント (吹替)

お題「ゆっくり見たい映画」

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]

 

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www.imdb.com

 

イギリス、ドイツ、ロシアといった大国間の陰謀が渦を巻き、第1次世界大戦勃発の危機が迫ろうとしていた。そんな中、コンラッド(ハリス・ディキンソン)は父親のオックスフォード公(レイフ・ファインズ)に連れられ、高級紳士服テーラーを表向きの顔にしたスパイ組織キングスマンの一員として迎えられる。世界に迫る危機を回避しようと動き出す二人だが、その前に怪僧ラスプーチンリス・エヴァンス)が立ちはだかる。

シネマトゥデイより引用

 

映画とはポエムです!ポエムとは映画でもあります。それでは大いにポエムちゃいましょう!

 

今日のポエム

スパイアクションの復建

 

今回はネタバレスレスレの誉め解説モード。

 

いや、面白いじゃん!

 

でも、キングスマンシリーズのイカれたテンションはクライマックスの🐐の「カプリ」とラスプーチンとの絡みであるだけで、どちらかと言えばシリアスより。

 

だから『キングスマン』での田舎宗教右派チャーチ大殺戮みたいなシーンは本作には無い。(画像はIMDb)

 

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キングスマン

つまり同じマシュー・ヴォーン監督作品ならどちらかといえば歴史を独自の視点で描いた(改変した?)『X-MAN:ファーストジェネレーション』(2011) に近い。

 

そういう構成にしたのは、どうやらヴォーン監督の「国家のためにではなく世界平和のためのスパイ」を本気でやろうとしているからと自分はみた。そうでなければ第一次世界大戦の戦闘を描くはずはないからだ。あの流れで本作は異質な雰囲気になっている。

 

作品が停滞しかねないこのエピソードを插入したのは、前2作を知っているなら、どの国家にも属さないインデペンデントな諜報組織という、リアリティが無い、スパイ作品のパロディとしか思えないこの組織に、物語・ドラマ上のリアルを成立するためにやったとみるしかない。成立の理念、戦争の残酷さ悲惨さを避けるためにキングスマンという組織が存在する、した。ということを。

 

そうまでしてヴォーン監督がこだわったのは自分がかつてスパイアクションテレビドラマ『0011ナポレオン・ソロ』(1964‐1968) の主演だったロバート・ヴォーンが自分の父親だったと考えていたあのエピソードも含めて考えると、自分がかつて観て憬れていたスパイアクションの世界を21世紀にも作り出そうとしたと考えるしかない。何故なら、007や0011などの「悪の秘密組織と戦う」スパイの世界そのものが今や陳腐化しているからだ。本家だった007さえ、今やその身の置き場を探して迷走している現状なのだから。

 

悪のボスと悪の組織とそれと戦うスパイなんてのはこの世には実在しない。もちろん自分等庶民もそのことも充分に承知していて、それらを鑑賞するときは「それはそれ、これはこれ」と、まるで様式化した時代劇をみているかの気持ちで感情を切り替えて観ているところがある。

 

でも、マシュー・ヴォーンは違った。

 

つまり、今や絶滅しかかっているスパイアクションというジャンルを再構築しようとしているのが、キングスマンシリーズであり、本作と考えるしかない。

 

ヴォーンはマジだおそらくは前2作がスパイアクションのパロディとして評価されているところが気にいらないのかもしれない。それが本作には濃厚に反映されている。

 

だから、『X-MAN:ファーストジェネレーション』的、伝奇的な手法を使ってまで本作を撮ったとみるしかない。

 

それに元々スパイアクションとは冒険談に含まれるし、冒険なら奇談にも含まれ、奇談なら伝奇に含まれてもいる。

 

何よりも平和のために戦うスパイそのものが、リアルよりも伝奇的な存在だ。彼等に対抗する悪の秘密結社なるものの原型が、アメリカ合衆国第34代大統領であるアイゼンハワーが1961年の退任演説でその存在を指摘し警告した。軍部と産業界との癒着で誕生したと言われている軍産複合体が大きなモデルになっているからだ。

 

「自らの利益のためならどんなこともする存在」、それがそれまでフィクションにおける悪の秘密組織が、国に属する組織に置かれていたのと違って「宗教・政治思想にためにではなく、利益のため犯罪を犯す国家に匹敵するほどの存在」として、世間に認められて、かつ、大衆に潜む伝奇的ロマンチシズムを刺激して結びつかれて誕生したのが、ヒーローに対抗する敵として源流にあるからだ。

 

だが現在では、もはやは記号としてしか機能していない。だから、それらの存在を再構築して、新たなスパイアクションとして再生させようとした。それがキングスマンシリーズであり、本作だ。(画像はIMDb)

 

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キングスマン:ファースト・エージェント

本作で、その意気がビンビンと伝わってくる。

 

気に入ったぞ!

 

劇場で鑑賞。

 

 

 

 

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