ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
今回もサクっと終わらせたい。
いや、観たのはちょっと前だったんだが、コノ作品はヘン。
そのあたりが直観としてわかる説明に、コノ作品は米アカデミー賞前日に行われるメジャーではない独立系映画作品のみが対象となるインディペンデント・スピリット賞なるものがあって、そこで最優秀脚本賞を受賞している。ちなみにお仲間に『π』(1998)のダーレン・アロノフスキーや『マルコヴィッチの穴』(1999)のチャーリー・カフスマンが並んでいるのでココのヘンさは想像していただけるだろう。
内容は、田舎で豚と共にトリュフを探して日々の糧を得ている男が、ある夜に豚を誰かに盗まれて、それを追いかけるためにバイヤーの青年を連れて都会へと行く。実はこの男は元は料理人だったらしいのだが、何故か非合法のファイトクラブで殴られたり、一流料理店のコック長に説教したり、料理を作って泣かせたりするという流れ。
ヘンでしょう。
実は、自分は別な作品が頭に浮かんだ。
「ザ・シェフ」かよ!
『ザ・シェフ』とは、かつて『週刊漫画ゴラク』に連載されていた剣名舞原作・加藤唯史作画によるマンガで、内容は店を持たない流れの天才コックが法外な値でアチラコチラで料理をしてゆくうちに客の個人的問題までも料理で解決してゆくというドラマだ。
コノ作品にそっくり。
まあ、ここで『美味しんぼ』じゃないのかよ!なツッコミもありそうだが、アレは社会に対する批判が強めなので、より人情味が強いこちらを思い出した訳よ(言い訳)。
ただ、もちろんこれは物語の視点からであって、ドラマが語ると別の要素が見えてくる。それをより明確に分かってもらうには、同じ雰囲気をまとう1989年『パペットの晩餐会』を観ている方が良い。
良いのだが、ソレが描いていたのが「解放」ならコレがやっているのは「孤独」。
もっと具体的に言うなら、愛の不在における孤独を描いているところだ。だって主要人物の3人は愛される者を失っている設定になっているから。
付け加えると、トリュフを探す豚は雄ではなく雌なので、ケイジ演じる主人公はどうしてそこに固執するのかが容易に察することができる。
コノ作品は、『パペットの晩餐会』と対極にあるわけ……でも、『パペット』には負けているかな、やっぱり。
でもまぁ、そんなに悪くも無い。そんな立ち位置。
あと、久しぶりに演技をしているケイジを見たよ。元々オスカー受賞者だもんね。
VODで鑑賞。