ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
『劇場版 マジンガーZ INFINITY』は『マジンガーZ』の10年後を舞台にしたアニメーション活劇。かつてDr. ヘルの魔の手から世界を救ったマジンガーZのパイロットだった兜甲児は現在は研究者として日々を過ごす。そんな折、富士山中から巨大なロボットと謎の少女が発見されたのをきっかけに突如出現した機械獣の軍団が甲児達に襲い掛かってくる。首謀者はかつて倒したはずのDr. ヘル。彼の目的は何なのか?そして兜甲児は再びヘルの野望を食い止める事ができるのか?
まずは最初に断っておくと再放送を観てたとはいえ記憶はおぼろげだし、どちらかといえば自分はマジンガーよりもガンダム世代だし、そもそもガンダムよりもボトムズやマクロスが好きという人間だ。そして熱心な永井豪ファンというわけでもない。どちらかといえば石川賢の方が好みだ。典型的な拗れ方なのは自覚している。
そうなのに冒頭のシーンから水木一郎兄貴の歌声が聴こえてくる間に中から高揚感が湧き起こってしまうのだから不思議だ。この辺りは『パシフィック・リム』を初めて観た感覚にも似ているから「イメージとは何かの引用の繋ぎ合わせ」みたいなジャン=リュック・ゴダールチックな感慨にもなる。まさしく売り文句の「原点にして頂点」は伊達ではない。
逆にいえば、この部分に少しでも心が動かなければ、後はひたすらに退屈する映画でもある。ロボットと怪獣の面白さに触れていなければピンとこないし、知らなくてピンと来たなら「この素晴らしい世界にようこそ!」だ。
ドラマそのものは人気アニメではよくある後日談だ。兜甲児や弓さやか、ボス達の「その後」を描いている。ようするに「彼らがどう変わったのか?変わらないのか。これからどう変わってゆくのか?」を主眼に描かれている。
もっとも一見さんお断りでもなく、新キャラのリサや量産型マジンガーなどを入れることで取っつきやすさを図ろうしている配慮もある。それにそれとなく永井豪の感触を忍び込ませてファン以外の人達への感情移入も導いている。
感触とは、簡単いえば「良識への反逆」だ。永井豪の出世作『ハレンチ学園』が世間から叩かれたときに彼がしたのは人気キャラを全てぶっ殺す。事だったし、それが一時の感情ではなく作風であるのは短編マンガ『ススムちゃん大ショック』や『鬼 ーー 2889年の反乱 ーー 』からもみて分かる。ここでは架空のエネルギーである光子力のマスコミの在り様やヘルの提案に逡巡する政治家達で描かれる。
次には、それとは裏腹に永井豪は情の部分にも強い拘りをもっているところだ。『デビルマン』での不動明と飛鳥了の関係。そして暴漢達に襲われる牧村家を命がけで助けるのは不動明に心酔した不良たちなのだから。 -- 余談だが、その結晶が『手天童子』ーー 『INFINITY』でのDr. ヘルと兜甲児の関係にノーラン監督作『ダークナイト』のバットマンやジョーカーを連想したり、クライマックスで『新世紀エヴァンゲリオン』のアレを思い出したりもするだろうが、順序は逆で、永井豪が先取りをしていただけで『INFINITY』ではそれをより具体的に描いて魅せたに過ぎない。
それらの感触にリサにある仕掛けを入れて「戦う理由」を今風に仕立てあげている。
個人的には、ちゃんと兜甲児のスケベ顔や〇○〇〇ミサイルをやったのも好感がもてる。
と、まぁ自分の拙い記憶で魅力を語ってはみたもののシメの言葉はこれしかない……
『俺は感動した。君達も感動しろ!!』これだけだ。