ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
今回はいつもと違ってマンガについて語ってみたい。
しかも戦争を題材にした作品だ。
題名は『零戦少年』。
内容は1巻2巻にわたる二部構成になっていて、1巻は著者葛西りいちがニート時代に祖父から聞いた戦争体験を基にフィクションとして構成されていて、太平洋戦争時に農家の11人兄弟の末っ子っだった主人公こと安男が「稼ぎイイ&モテる」という理由でゼロ戦の飛行機乗りになる夢をもち、志願、予科練、飛行練習生、航空隊配属、各地を転戦して、やがて特攻に選ばれるも、マラリアに罹ったためにそれを逃れたが、一緒に戦ってきた戦友等は亡くなり、死に場所を求めながらも本土で終戦を迎えたという展開になっている。
1巻のキモは「稼ぎイイ&モテる」でどん底人生からの一発逆転を狙っていた安男は当然のことながら当初は死に対してあがいていたが、敗戦が濃くなるにつれて、やがてその気持ちが薄くなり「死」とういのが自身にまとわりついていく過程が描かれているところだ。
しかし、こう書くとシリアスぽいが、最初の方は陰部を触診されたら思わず勃起したとか、気になるあの娘に対して優しい嘘を言ったら、その娘は別の男に乗り換えただの笑いどころもあるので、そんなに暗くも感じないし、本作の絵柄事態が所謂エッセイマンガのそのものなので重くもない。
そして1巻の読後は、今の若者と戦争中の若者の根本はそれほど変わらず、まわりの状況で、その人格が出来上がってしまう、という感想になるだろう。
ところが、2巻でその感想は一変する。
2巻とはあるが、ここでは1巻から4年経っていて、著者もやがて二児の母になるところ、そこに1巻を読んだ、かつて予科練と戦場で一時期すごした三浦という老人から著者が知らなかった祖父安男の意外な面が知らされる。
その展開は書かないでおく。ただ、個人的な感覚で言えば、当事者でない我々にとって、その伝承や記憶や記録に触れても、それは現実にあった抗しきれない何かの一辺を撫でただけなのだということかもしれないということをいつも心に止めておくべきなのだろう。
今回は我ながららしくない事をした。