ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略][加筆修正有]
『ジョン・ウィック』を観ました。
ガンファイトがとても印象に残る映画でした。
あの地味そうでかつ実在しそうな「ガンフー」というアクションについてはオフシャルサイトのコラムに解説が載っているのでそちらを参考に。そして、この「ガンフー」はこの映画では重要な “要” になっています。
映画『ジョン・ウィック』オフィシャルサイト
しかしこの映画はヘンすぎる。
要点を四つにまとめると。
A: 復讐の動機が「犬を殺されたから」
B: 裏(表も)社会を知る誰もがジョン・ウィックを「恐れる」というよりも「尊敬」している。
C: 裏社会には裏社会にしか通用しない独自の機軸(通貨)が存在する。
D: 殺し屋達が泊まるホテルがあり、いわゆる中立地帯である。
Aは動機としては弱すぎる。ペット好きには共感するのかもしれないが、その他には「だから、何?」になってしまうし、それを補強するような描写もあっさりとしすぎて説得力としては薄い。
Bは『沈黙の戦艦』 (1992) のコックや『イコライザー』 (2014) の店員などの「舐めていたら、恐ろしく強かった」パターンとは違って「最初から誰もが強いと認めていた」パターンなので、最初からその前提で観ているからサスペンスとしての展開は難しく映画としての盛り上がりとしても薄い。
CとDは映画としてのオリジナリティな設定なのだが、「おもしろい」だけで現実感が薄い。
つまり、この映画リアリティがない!
もう少し、つけ加えるならこれは現実を舞台にしたのではなく『マトリックス』 (1999) に近いファンタジーな映画だ。もうちょっとだけつけ加えると、これダークファンタジーである。
通常なら観ている人にリアリティが感じられないとたいていは「つまらない」と感じてしまう。リアリティとは観ている人が映画に感情移入できるように仕込みが “フック” されているからだ。ハリウッド映画で「愛」とか「家族」とかがひんぱんに使われるのは、それが世界中の誰もが簡単に感情移入に “フック” できるから使われるのだから。
しかし『ジョン・ウィック』は「つまらない」よりは「面白い」のはどうしてか?
ここで「ガンフー」の役割が大事になってくる。何故ならこのアクションが感情移入の “フック” になっているから。このアクションがなければ『ジョン・ウィック』はリアリティが無くなり観ている人には「何じゃこれ?ポカーン」になってしまう可能性が大だ。
さらにさらにつけ加えると、これは主演のキアヌ・リーヴスにピッタリなのが驚きだ。もう、キアヌはこの手の方法でしかスターとしてのステイタスを維持できないのかもしれない。
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