ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
スティーブ・オルテン原作の小説の映画化。ジョナス・テイラーは、過去の海難救助で同僚を犠牲にしてしまった救助ダイバーだ。その理由が未知の生物によるものだと主張して信頼と職を失いタイの小さな村で燻ぶっていた。そんな彼に昔の仲間から救助の依頼をされて向かった先は硫化水素の層の下に存在したマリアナ海溝よりも深い深海であり、そこにかつてジョナスが出会った太古の生物メガロドンが生息していた。それが海上にも現れた瞬間、メガロドンVSジョナスと仲間たちとの闘いがはじまった。
この映画がリアリティや中味が無いのは当然でもある。元々この手のジャンルの嚆矢である『ジョーズ』がリアリティも中味もないのだから。
『ジョーズ』がスゴイのはスピルバーグ監督がドラマやメッセージではなく、ただ過去の怪獣映画 -- 『原子怪獣現わる』、『大アマゾンの半魚人』、『ゴジラ (1954)』等々 -- から引用かつそれを応用して中味がないにもかかわらず面白い娯楽作に仕上げたことだ。小麦粉だけで美味い料理を作ることができる料理人。それがスピルバーグであり、その最高峰が『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』だろう。
そして、ややこしいことに『ジョーズ』以降、このジャンルにはアメリカの国民的文学である ハーマン・メルヴィル著『白鯨』の「神と人間」なモチーフも忍ばせているところだ。その方向からみればジャウム・コレット=セラ監督『ロスト・バケーション』での「食べやすいデッカイものがそこに漂っているのにどうしてその女性にこだわるの?」的な疑問も「宗教としての試練」を肩代わりしたものだと解釈すれば筋も通る。まさに鮫が鯨を食っちゃた訳だ。『MEG』だと人類が禁忌の地に入って行ったがために起こる災厄としてのメガロドンになる。だからクライマックスも合点がゆく。-- ちなみに『ジョーズ』にはメルヴィルの『白鯨』ではなく、ジョン・ヒューストン監督の『白鯨』からも引用はしている。
『ジョーズ』と『白鯨』の二本が、このジャンルの骨子なら、これをどうやって面白く魅せるかが監督としての腕の見せ所にはなるが、人によっては感動作、自分には奇怪作である『フェノミナン』のジョン・タートルトーブ監督が撮ると、『ジョーズ』からの大引用は当然として、『アビス』、『海底二万里』、『ディープ・ブルー』、『インデペンデンス・デイ』を雑に引用しくつしていく。
雑に引用だと分かるのはオープニングの状況、ジョナスが未知の何かに襲われるシーンで引用する何かが思いつかなかったのか、ひどく凡庸になっているからだ。最初のつかみが弱くなっているせいか、後半に盛り上げても全体の出来上がりの締りは弱くハッキリいって大味だ。
その大味をカバーするのは、贅沢に予算を投じた派手な見せ場なので、だから「味としてはイマイチだが飯はドカッと大盛り」なので満腹感で不満はしない。
でもステイサムが主役なのに薬味程度のパンチしかないのはどうかと思う。もうちょっと活躍できなかったのか?これはこれで贅沢だけども。
映画『MEG ザ・モンスター』本予告【HD】2018年9月7日(金)公開
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